石田圭一(大阪府)
切断された双頭レールが残っている阪急中津駅前の梅田貨物線フェンス。上空を横切るのは阪急三複線区間の高架。
フェンスには説明文が掲げられている。
レールの高さは約110mm。
‘22.7.26 東海道本線(梅田貨物線) 梅田信号場付近(3点共)
大阪市北区中津3丁目にある阪急電鉄中津駅。改札を出て階段を下り、ガードレールのある道路へ出て、梅田貨物線と道を仕切るフェンスの基礎を見ると、双頭レールの切断面が見える箇所がある。
このレールは『「見る鉄」のススメ~関西の鉄道名所ガイド』(創元社)などでも紹介されているのでご存じの方も多いと思うが、2023年春に梅田貨物線が地下化され、不要になった地上設備の撤去が始まれば、このレールも消えてしまうと思われるので改めて紹介させていただいた。
そのフェンスの基礎には高さ110mm、幅55mmの双頭レール断面が、約300mm間隔で16個並んでいる。これは役目を終えたレールが、フェンスか看板の支柱として再利用され、その役目も終えたために切断された跡と思われる。
双頭レールは、明治初頭の鉄道黎明期にわずかに使用された珍しい種類で、当時は英国で製造・輸入され、開通したばかりの新橋~横浜間、大阪~神戸間で使用された。しかし使ってみたら安定性が悪く、国内でのレール生産が可能になると双頭レールは敬遠され、用済みとなったものは建築資材として再利用された。
今はコンクリートに埋もれている中津のレールにも、側面に刻印が残っていれば経歴が判るので、兵庫県立歴史博物館が所蔵しているレールと同様に、かなり貴重な産業遺産となり得ると思われる。
フェンスには有志の作成した説明文が取り付けられていて場所は見つけやすいと思うので、興味のある方は再開発が始まる前に見に行って欲しい。ただしこの場所は一方通行道路の車道であり、日中は頻繁に車が通るので、充分気をつけていただきたい。
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