冨吉郷太(鹿児島県)
試乗会にて来賓のお客様を乗せて快走する”NexTram KIRIKO”号。
‘19.4.18 鹿児島市交通局 神田
鹿児島市交通局では、「トラムの魅力アップ」と「明治維新150年記念」をテーマに、9500形9513号の外装・内装を大幅に改装し、”NexTram KIRIKO”(ネクストトラム きりこ)号と名付け、4月18日に出発式を行い、同日より一般営業電車としての運行を開始した。9500形9513号の起用理由のひとつは、「9513」を逆から読むと西郷隆盛の「西郷」、すなわち「サイゴウクン」と読み下すことができるからである。
外観は、黒潮を彷彿とさせるロイヤルブルーを基調に、古来より鹿児島県下で多く採取できた金をイメージした黄土色のラインを巻き、屋根には薩摩武士の屋敷内の居室に多く採用されていたベンガラ色を施した。また、内装は、薩摩武士の剣術「示現流」の木刀として重宝された「ゆす」の木をはじめ、国内産の木材を座席や床に多用している。その座席数も、従来の31席から26席に減らしたうえで、JR九州とドーンデザイン研究所の協力により調達した787系のモケット(初期の刺繍タイプ)を使用したソファ、一枚の木材より削り出したスポークタイプの背もたれを持つ展望ソファ、そして白と黒の本革を用いたセパレートシートなどで構成し、天井には日本の近代化を進めるべく開設された「集成館事業」により生み出された薩摩切子を8色8種類用意したうえで、新設した欄間に埋め込むなど、「日常の中の贅沢」を演出している。なお、同車に新たに名付けられた”KIRIKO”号は、この薩摩切子に由来している。それ以外にも、日よけ用のカーテンロールに薩摩切子をモチーフとしたスクリーンや、室内照明を蛍光灯からLEDとし、夕方から夜間にかけて赤みがかった温かさを演出するものとなっている。
お披露目と出発式を行った4月18日には、森博之鹿児島市長、鞍掛貞之交通局局長をはじめ、鹿児島市の観光関係者らと、テープカットおよび出発進行の合図役として鹿児島大学附属小学校の児童らが出席した。9513号”KIRIKO”号は、同日より固定ダイヤのうえで、通常の営業電車として鹿児島市内全線で運行されている。