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去る7月7・8日、元京浜急行電鉄デハ230形である高松琴平電気鉄道30形(27-28)のさよなら運転が行われました。このTc車28号が履いていた台車は名鉄由来のBrill27MCB2Xでしたが、この台車こそ、大正期から日本の電気鉄道に数多くの足跡を残してきた名品、Brill27MCBとして現役最後のものでした。
『HISTORY OF THE J.G.BRILL COMPANY』によると、J.G.Brill社がMaster Car Builders Associationの規格に沿って開発した釣合梁方式の台車、27MCBを世に送り出したのは1909年のこと。日本での採用は1912(大正元)年に登場した阪神電気鉄道51形が最初であり、以後、それまでの27E1などに代えて南海、阪急、愛知、京成、東武、京阪、京浜など、数多くの電鉄会社がそれぞれの規格に合わせたBrill27MCBを導入していきます。MCB規格の台車自体はそれ以前から他メーカーでも製造されており、日本では昭和に入ると比較的に構造が簡単なBaldwin製の台車を範とした国産台車が主流になりますが、多数輸入されたBrill27MCB系統の台車は戦前、戦後を駆け抜け、平成の世まで残ったものも少なからずありました。今年に入って相次いで解体された福井鉄道モハ141-2、静岡鉄道クモハ20の台車もBrill27MCBの仲間です。
Brill27MCB2X(高松琴平電気鉄道28号) 写真:2007.7.8 今橋 高橋一嘉
阪神51形以来、日本におけるBrill27MCB 95年の歴史の最後を飾った琴電28号の27MCB2Xです。会社の成立過程で多数のBrill27MCB系統の台車を保有することとなった名鉄から譲渡されたもので、ブレーキの両抱き化、コロ軸受化などの大改造を施されており、本来のどちらかというとスマートなイメージとはちょっと異なる印象を受けます。
この台車の引退で、黎明期のインターバンや郊外電車を駆けた名台車も本線上から姿を消したわけですが、東武鉄道デハ1など、静態保存されているものも少なからずあり、この機会に訪ねてみるのもよいかも知れません。 2007.7.12作成
参考文献
『HISTORY OF THE J.G.BRILL COMPANY』Debra Brill
(2001年 Indiana University Press)
「台車のすべて(5・6)」吉雄永春
(『鉄道ピクトリアル№82・83』所収/1958年 鉄道図書刊行会)
「台車とわたし2」高田隆雄
(『鉄道ジャーナル』№95所収/1975年 鉄道ジャーナル社)