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川崎重工が開発を進めていた低床電池駆動LRV「SWIMO(スイモ)」の実験車輌“SWIMO-X”が完成、19日に川崎重工業播磨工場で報道公開されました。今回はお休み中の「編集長敬白」に代わってこの“SWIMO-X”をご紹介しましょう。
SWIMO-X 写真:2007.11.19 川崎重工播磨実験線 RM
電池駆動のLRVといえば鉄道総研による架線・バッテリーハイブリッドLRV“Hi-tram”が先日公開されたばかりですが、“Hi-tram”がリチウムイオン二次電池を採用していたのに対し、この “SWIMO-X”は川崎重工が開発したニッケル水素電池“ギガセル”を搭載しています。また、“Hi-tram”が架線・バッテリーハイブリッド鉄道車輌のシステム開発を目的としていたのに対し、“SWIMO-X”は台車などの開発も含めた川崎重工による初の超低床LRVそのものの実験車輌ということが何よりの注目点でしょう。ちなみに「SWIMO」とは「Smoothな乗降、Smoothな非電化区間への直通運転を達成する(WIn)移動手段(MOover)」というコンセプトから名付けられたものです。
腰掛内に収められたニッケル水素電池“ギガセル” 電池駆動システムの基本的な概念は“Hi-tram”とほぼ同様で、既存路線の延長線または新設路線を架線レスで建設することを目的としたものです。架線下ではパンタグラフからの集電により加速、停車中の架線からの電力や制動時の回生電力を無駄なくバッテリーに蓄えるというもので、当然ながら回生失効の心配はありません。また、変電所から遠いなどで電圧が降下した場合や、バッテリーがフル充電の状態となった場合には架線下でもバッテリーからバックアップとして給電されます。なお、冷房などに使用する補助電源は、加速時はバッテリー、制動時は回生電力、そして停車中は架線と切り替わります。
パンタグラフが備わるC車体 一方、架線のない区間では、このようにパンタグラフを下げ、架線下や充電設備などでバッテリーに蓄えた電力を使用して加速、制動時の回生電力はバッテリーに蓄えます。補助電源は加速時および停車中はバッテリー、制動時のみ回生電力で賄われます。今後は5分間の急速充電により搭載電池容量の2割の電力を蓄え、追加充電なしに10km以上走行できることを実証する予定とのことです。
A車体
B車体 今回試作された“SWIMO-X”は全長15,000mmの3車体連節構造で、車体長が両先頭車5,750mm、中間車2,500mmとなっています。このうちA車体は両側とも運転室直後に1,000mmの片開き扉の配置ですが、B車体は一方の側面は車体中央に1,200mmの両開き扉、もう一方の側面は運転室直後に1,000mmの片開き扉という配置です。また、床面高さは出入台部が330mm、一般部が360mmとなっています。なお、将来的な展開としては3車体構造で15〜17mクラス、また5車体構造で20〜30mクラスのものが想定されているようです。
なお、塗装には「水性二液塗料」なる塗料が使用されているとのこと。これは従来の溶剤型ウレタン塗料に匹敵する見た目や耐久性を確保しながら、揮発性有機化合物の発生源である有機溶剤使用量を約8割削減できる「人と地球にやさしい」塗料とのことです。ちなみに塗色名は「イクシオベージュ」と「イクシオホワイト」と名づけられています。
次回は車内と走行の様子をご紹介します。