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しばらく前、7月の中頃だったでしょうか、「大鉄道博覧会」を開催中の江戸東京博物館に都電の台車が置いてあったという話を聞きました。はて、都電の台車とは…? 件の博覧会には既に行っていましたが、その時には全く気がつかなかったため、とりあえず両国へ。
場所は大屋根のような常設展示スペースの下、チケット売場などがある3階の広場部分。あたりを見回してみると…おぉ、あったあった…6000形のD-10かな? いや違うぞ…
なんと、これは4000形のD-11ではないですか! 東京市電(後の都電)D-11は、大量増備された3000形のD-10に代わって1925(大正14)年登場の4000形から4100形、4200形と採用されたもので、端梁が低い独特のシルエットの鋳鋼製台車枠が特徴。ボルスタを低い位置に抑えつつ僅かに従軸側に偏心させ、またブレーキ機構にも独特の構造を採用した意欲作でした。戦後も鋼改で誕生した鋼製の4000形が履いていましたが、4000形は1970(昭和45)年に全廃となっており、現在は1輌の保存車もないはず。その台車をまさかこの目で見られようとは…。全廃から実に37年、よくぞ残っていてくれたものです。
よく観察してみると、動軸側のみコロ軸化されており、ボルスタには「D11」の文字と日車の社紋の陽刻があります。「マクラバネツリ」など各部の名称を書いた木札が付けられているので、おそらく局の教習用で残されていたものでは、と推察しますが、一体これまでどこに眠っていたものなのでしょうか。
その後、名取編集長が江戸東京博物館での講演会の折に学芸員の方にお聞きしたところ、1991年に交通局から移管されたものとのことで、以来、倉庫に保管されていたのが、今回の大鉄道博に合わせて陽の目を見たとのことでした。
大鉄道博は9日までですが、このD-11は今後、常設展示になるようで嬉しい限り。4000形唯一の“形見”が末永く保存されることを願ってやみません。 2007.9.5作成
参考文献
「台車のすべて〔完〕」吉雄永春(『鉄道ピクトリアル№114』所収/1961年 鉄道図書刊行会)
『RM LIBRARY19 東京都電6000形』江本廣一(2001年 ネコ・パブリッシング)