text & photo:RM
取材日:’22.2.18 場所:鎌倉車両センター中原支所
取材協力:東日本旅客鉄道
JR 東日本は、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両FV-E991系「HYBARI」を開発、本日報道公開されました。
SDGs、すなわち持続可能な社会を目指し、JR東日本グループでも長期環境目標として「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を展開していますが、その一環として「水素エネルギー活用の拡大」というのが挙げられています。燃料電池とは、水素を燃料とし、空気中の酸素と化学反応させることで電力を発生させる装置で、その反応の過程で生じるのは水だけ。すなわち二酸化炭素などを発生しない、クリーンなエネルギー源として注目されているものです。
▲FV-E991形から見た編成全景。
今回の試験車両「HYBARI」は、2号車屋上に水素貯蔵ユニットを搭載し、同じく2号車の床下に搭載された燃料電池装置に送り込むことで電力を発生させます。以後は基本的に電車と同じ回路で、電力を1号車床下の電力変換装置(コントロールユニット)へ送り込み、VVVFインバータ制御を行います。また、大容量の蓄電池を1号車床下に搭載しており、ブレーキ時にモーターから発生した電力を充電。これも力行時に用いることで、省エネルギーとする仕組みです。
▲20m級3扉で、全体的な外観は烏山線で活躍している蓄電池式電車EV-E301系に似ていますね。
▲シンプルな非貫通前面。
非常に彩度の高いブルー系ラッピングが施された車体は、燃料電池の化学反応から生まれる水を、碧いしぶきと大地を潤すイメージで捉え、スピード感と未来感を持たせたデザイン。愛称の「HYBARI」は、「HYdorogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation」から取り、さらに鳥のヒバリにも掛けています。ヒバリは春の訪れを告げる鳥であり、本形式も大地に春の息吹を吹き込むように、車両に新しいエネルギーを吹き込むイメージとしてシンボルマークがデザインされたそうです。
▲車体側面に配置された「HYBARI」のロゴマーク。
▲思いのほかシンプルな運転席。
▲車内はオールロングシート。
▲扉間のロングシートは12人掛け。
2022年3月下旬より、南武線(川崎~登戸)、鶴見線、南武線尻手支線にて実証試験が行われます。また、水素の充填方式は2種類あり、短時間で充填可能な「35MPa水素充填」は鎌倉車両センター中原支所および鶴見線営業所にて(航続距離は約70km)、一方容量一杯まで充填可能な「70MPa水素充填」は扇町駅にて(航続距離は約140km)それぞれ行われます。