訪問日:2018.12.16
text & photo:高橋 隆(RMM)
日本海を望む風光明媚な長大路線として知られるJR西日本・山陰本線。100年以上の長い歴史を持つ同路線には、現在も開業当初からの面影を残す立派な木造駅舎が点在しているのが特徴であり、旅情を掻き立てる大きな魅力ともなっています。
今回はそんな山陰本線の要所に佇む“生え抜き”のレトロ駅舎群を目当てに、公共交通機関または徒歩で1日かけて各駅を見て回る、2018年12月実施の現地訪問プランを振り返ってみましょう。
※時刻表データは訪問当時のものです。
■旅の始まり寝台列車から
▲東京から出雲市までは寝台特急「サンライズ出雲」で11時間58分の旅。
■今回の予定はこれでいくぞ!
▲当日の区間を出雲市~温泉津(ゆのつ)に設定、時間的に無理のない範囲で順方向に進みながら木造駅舎がある4駅(駅名が茶色の駅)を訪問する計画となった。
■大正時代に建造?一つ目の木造駅舎「江南駅」へ
- 下り「サンライズ出雲」には、到着18分後に出発する浜田行き普通列車325Dが接続する。
- 出雲市から3つ目、所要時間にして13分ほどのところに、同行程第一の木造駅舎が建っている「江南(こうなん)駅」がある。
- 幅7m・高さ760mmクラスのプラットホームを有する列車交換可能駅だ。
- 江南駅は1913(大正2)年11月に開業、翌1914(大正3)年に現在の駅舎が完成したと言われる。
- 製造年代の異なる木製ベンチが置かれた待合室。2018年当時は委託によるきっぷの発券業務も行なっていた。(現在は行っていない)
- 広めのロータリーに自動販売機、公衆電話ボックス、公衆トイレといった、駅前を彩る定番的設備が置かれている。
- 50分ほどの滞在時間中、益田発出雲市行き上り普通列車344Dが同駅を通る。
■築100年越え!二つ目の木造駅舎「波根駅」
- 11:24江南発の大田市行き普通列車363Dで次に向かったのが、3つ先の「波根(はね)駅」。ちょうど米子行き特急「スーパーおき2号」との交換が見られる。
- 363Dが出発して暫く待つと、今度は新山口行き特急「スーパーおき3号」が高速で通過していく。
- 幅約8mと広めのホーム。高さは旧鉄道院の古典規格と言える610mmクラスに近い。木造のホーム上家(待合室)も現役。
- 少し小ぶりな寄棟造りの波根駅駅舎。1915(大正4)年7月開業で、既に築100年を越えている。
- きれいに整備された待合室。駅事務室であったスペースは地元の集会所として活用されている。
- ホーム側から駅舎を眺める。駅本屋と上家は長い歴史の中で建て増しされたようだ。
- 波根駅から次の目的地まで県道285号線を徒歩で向かう。途中、景勝地の「掛戸松島」に立ち寄れる。
- 目的地少し手前の山陰本線大原踏切付近で出雲市行き普通列車364Dとすれ違う。
■JRロゴの鬼瓦が特徴!三つ目の木造駅舎「久手駅」
- 線路を挟んで「久手(くて)駅」が見えてきた。実は先述の大原踏切を渡らずにここまで来てしまうと暫く線路を越せないため数百メートル大回りとなる。
- 波根駅と同じ日に開業した久手駅の駅舎は共通規格で作られているようだ。
- 2016年から山陰本線では橙色がラインカラーとなり駅名標に用いられている。
- ホーム側から見た駅舎の様子も波根駅そっくり。
- 瓦葺き屋根のJRロゴがあしらわれた鬼瓦は同線木造駅舎の特徴。
- 幅8m・高さ610mmクラスで上家が置かれたプラットホームの構成も波根とよく似ている。
■大田市から徒歩で四つ目の木造駅舎「静間駅」へ
- 久手から浜田行き普通列車327Dに乗車して約3分、次の大田市(おおだし)駅で下車して小休止。コンクリート造りの現・大田市駅駅舎は1970(昭和45)年に建て替えられた2代目。
- また徒歩で3.5kmほど進む。静間川にかかる橋梁付近ですれ違ったのは大田市行き普通列車328D。2018年4月以降、山陰本線の普通列車には浜田鉄道部所属のキハ120形がよく使われるようになった。
- 「静間(しずま)駅」に到着。1926(大正15)年9月に開業、やや横長の立派な木造駅舎が今も貫禄を見せている。
- 駅名標は現行タイプに交換済。
- がっしりした作りの木製ベンチと、スライドさせるとガラガラと音を奏でる木の引き戸が味わい深い。
- 米子行き快速アクアライナー3454Dが通過。19:00発の米子行き快速を除き、静間駅には普通列車のみ上下合わせて22本が停車する。
- 駅本屋の屋根と上家が一体になった構造。
- 建物財産標の一種だろうか。手書きの木製プレートが掲げられていた。
- 踏切から駅へのアプローチを観察すると、ここが元交換駅であったことが線形から想像できる。
- 静間駅もまた610mmクラスの非常に低いホームだ。「汽車に飛び乗る」という表現がぴったり来る。
- 木造駅舎探訪はこれにて終了、定刻通りにやって来た益田行き普通列車329Dに乗車。当日の宿泊地・温泉津(ゆのつ)までは23分だ。
■木造駅舎探訪のあとは山陰の名湯へ…
▲温泉津はその名の通り泉質の高さで知られる温泉地でもある。古い街並みが保存されており、大正~昭和中期にかけて作られた洋風建築がランドマークになっている。
★Vol.2では、訪問した各駅を参考にA4サイズのNゲージジオラマで木造駅舎のある風景を再現します!お楽しみに!!
「ディーゼルカーで行く 山陰本線木造駅舎モデリング探訪 Vol.2(工作編)」はこちら