取材日:’20.12.19
text & photo:廣瀬 匠(RM)
取材協力:京都鉄道博物館
2020年12月19日から12月22日まで、京都鉄道博物館でJR西日本の電気検測試験車443系が展示された。443系は現在この1編成のみが運用されており、貴重な事業用車を細部まで見ることが出来る貴重な機会となった。
▲クモヤ442(手前側)とクモヤ443(奥側)の2両で構成されている443系。
■443系とは…
国鉄時代に製造された「電気検測試験車」であり、その名の通り架線・信号関連の検査を行う交直両用電車として1975年に2両編成2本が誕生。1987年の国鉄民営化後は1本がJR東日本、もう1本がJR西日本に継承された。JR東日本に継承された編成は2015年に廃車されており、現在は前述の通りJR西日本にのみ在籍している。
現時点で443系は吹田総合車両所京都支所に所属しており、JR西日本管内のほか、JR九州、JR四国、そのほか一部第三セクター路線での検測も行っている。
検査項目としては主に架線の検測などを行っており、架線の摩耗、位置、高さ、架線とパンタグラフとの離線の確認などを行っている。そのため、クモヤ443の屋根上には検測用のドーム、パンタグラフ、照明(サーチライト)などが配置されている。なお、信号関連の検測は現在、キヤ141系が行っており、443系では行われていない。
■入線シーン
京都鉄道博物館では営業線とつながった「車両工場」のコーナーでの車両展示をこれまでも随時行っており、入線シーンの公開を行う場合もある。今回もその模様が公開され、多くの来館者が443系の入線を見守った。
- 梅小路運転区~館内の移動にはDE10が用いられる。
- 展示線の手前で一旦停止。
- DE10の推進運転で館内に入線する443系。
- 移動を担当した梅小路運転区DE10 1118。
■外観
車体は急行型・近郊型に準じた上方の絞り込みが無い断面形状をしているが、前頭部は特急型(クハ481形300番代など)と同様の高運転台デザインという特殊な構造をしている。車体塗色は交直流事業用車の規程に則り赤13号をメインとし、クリーム4号の前面警戒色および側面上下に細帯が入る。なお、走行機器は特急型である485系と同様のものを採用している。
- 前頭部は、かつての485系などの国鉄特急型電車のような高運転台となっている。運転台上のヘッドライトは持たない。
- 基本車体は特急型と異なり、裾絞りはあるもののその上部は垂直に雨どいまで延びている。
- 車端部が車両限界の関係で内側に若干絞られてる。
- クモヤ443形の4位側。本形式は検査機器の関係で屋根上にクーラーを載せることができなかったため、ルーバー部に床置きクーラーが搭載されている。
- クモヤ443形の検測ドーム付近。車体上部に「電気検測試験車」の文字がならぶ。
- クモヤ443形の1位側。車端部同様、ルーバー部分に床置きクーラーが搭載されている。
■運転室周り~屋根上
●視認性向上!高運転台
先述の通り、前頭部は視認性を考慮してクハ481形300番代やクハ183形1000番代のような高運転台となっている(前面貫通扉は持たない)。
- 運転室周り。各所に手すりが設けられている。
- 運転台前面窓には窓ごとに2連ワイパーを装備。
- 運転台機器類を窓越しに見る。
●検査機器がずらり!クモヤ443
- クモヤ442形の屋上。このパンタグラフは走行用で、交直流機器が並ぶ様子はモハ484形にも似ている。
- クモヤ442形のパンタグラフ周りを少し角度違いで。
- クモヤ443形の屋根上に設けられた検測用のドーム。内部にはカメラなどが設置され、窓にはワイパーも。
- 同じくクモヤ443形検測用のドーム周り。架線を照らすサーチライトなどが設置されている。
- クモヤ443形に設けられた下枠交差パンタグラフは検測用のもの。
- かつてはクモヤ443形には2基のパンタグラフが搭載されていたが、現在は前位寄りの1基のみとなっている。
■床下機器にも注目!
- 台車は耐寒耐雪構造のDT32Iを装備している。
- クモヤ442の床下車端部に設けられたトイレタンク。
- 双頭連結器を編成両端に装備している。
- 胴受下部の横棒が左右に突き出した形状。エアホースやジャンパ栓のディテールにも注目。
- 自連と密連、どちらでも連結できる双頭連結器を上部から見る。
■各所に残る国鉄時代の面影
- 車体裾部に設けられた鉄道連絡船航送用フック。
- クモヤ442形の屋根上に設けられたAU13形クーラー。
- 「日本国有鉄道」と製造所の「近畿車輛」の銘板が取り付けられている。
- 所属標記は「近キト」となっている。「近」は近畿統括本部の略。「キト」は京都の略。
- 横軽対策施工車の証である「Gマーク」が車両形式の頭につけられている。
■新快速50周年企画もパワーアップ‼
RM446号と鉄道ホビダスで紹介した「新快速50周年企画 新快速で50!~学んで、遊んで、しんかいそく!~」が2021年3月14日(日)まで会期延長され、展示内容も更新されている。
- 今回、追加された223系の転落防止幌の実物展示。
- 高槻駅などに設けられているホームドアの実物展示。
- 2階の展示スペースに展示されている、113系時代の新快速のヘッドマーク(レプリカ)。
京都鉄道博物館
所在地:京都府京都市下京区観喜寺町
JR嵯峨野線「梅小路京都西駅」下車すぐ
開館時間:10:00~17:30(最終入館17:00)
休館日:毎週水曜
Tel:0570-080-462