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東北本線花巻駅の西口から歩くこと数分、廃線跡の自転車道に沿ってフェンスに囲われた電車が見えてきた。かの有名な「馬面電車」こと花巻電鉄軌道線デハ3である。
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「ハーモニカ電車」とも呼ばれたそうだが、なるほど頭を横にして見てみるとハーモニカのような形状だ。
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四方を囲むフェンスで写真を撮りづらいが、こうしてこの電車を今見ることが出来るのは、管理する方々とともに、おそらくはこのフェンスのお陰もあろう。そう考えれば、写真が撮れないことくらい、どうということはない。なにより、この電車が今も姿形を留めていることが重要なのだから。
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台車は雨宮製の板台枠のもので、あの銚子のデハ101が履いているものと同型のもの。銚子で見た時はなんて不思議な形だろうかと思ったが、花巻にはそれなりの数がいたようだから、雨宮の軽便電車用の規格品ということなのか、戦前の京王や京成電車が履いた「A」や「H」のような形式があったのだろうか。
デハ3が製造されたのは1931(昭和6)年、ちょうど宮沢賢治がこの花巻の地で「雨ニモマケズ」を著したといわれる年だ。帰り道、賢治が停留所で食したという「スヰトン」を探したものの見当たらず、代わりに白金豚弁当を買って花巻を後にした。 (高橋一嘉)
2008.12.30作成