国鉄の時代に各地で登場した地域色。その中でも最も有名なのが「湘南色」ではないでしょうか。第1部では湘南色の登場から現状までをご紹介しましたが、ここではなぜ湘南色と呼ばれるようになったかをご紹介します。
湘南色の語源である「湘南」は、言うまでもなく神奈川県西部の相模湾沿岸地域の事です。1950年にこの地域を含めた東海道本線東京〜沼津間および伊東線を走る湘南電車としてデビューした80系が初めて採用したことから、湘南色と呼ばれるようになりました。
湘南色の塗り分けは、アメリカのグレート・ノーザン鉄道のオレンジ色とこげ茶色の車体色を参考にして、遠くから見ても目立つオレンジ色と、汚れが目立たない緑色としたものです。しかしその後、国鉄は湘南色のオレンジ色と緑色は「ミカンの実と葉にちなんだ塗装」だとPRしています。より親しみやすさを高めるためだったのかもしれませんね。
湘南色を初めて採用した80系。クハ86001とモハ80001が京都鉄道博物館で保存されています。 ’16.4.1 京都鉄道博物館 P:松沼 猛
・ステンレス車にも継承された湘南色
湘南色は80系および後継車となる近郊形電車111系・113系・115系と急行形電車153系・165系・169系の運用範囲の拡大、転身によって各地に広まりました。これらの形式が最初に導入された東海道本線や東北本線・高崎線は、ステンレス車体の211系・E231系近郊タイプ・E233系3000番代の帯をオレンジ色と緑色のツートンとして、湘南色を継承しています。
国鉄時代末期の1986年からJR東日本黎明期に増備した211系。ツートンの帯はオレンジ色が太くなっています。 ’21.12.19 上越線 敷島〜津久田 P:寺尾武士
113系・115系を置き換えるために登場したJR東日本E231系近郊タイプは緑色の方が太くなっています。 ’16.7.1 東海道本線 根府川〜早川 P:松沼 猛
・時代に合わせて湘南色にも変化が
JR東海が継承した路線のうち、身延線115系と飯田線119系は国鉄時代末期に地域色を採用。静岡地区の「するがシャトル」に転用された119系および身延線123系もオリジナルカラーとなりました。また、東海道本線名古屋地区の快速用として投入した211系0番代も青帯を採用していました。
しかしJR東海発足後に身延線の115系を湘南色に塗り替え、211系0番代の帯色も湘南色に変更。また、中央本線103系、飯田線119系、身延線123系は白をベースとした湘南色帯に塗り替えました。また、その後JR東海が新造した211系5000番代と213系5000番代にも湘南色帯が採用され、時代に合わせて形を変えながらも湘南色の歴史は続いて行くことになります。
211系を置き換えるために導入されたJR東日本E233系3000番代。E231系と異なり、乗降扉にも帯があるのが特徴です。 ’20.3.21 東海道本線 早川〜根府川 P:松沼 猛
JR東海211系0番代・5000番代の湘南色帯の配色はJR東日本211系同様です。 ’22.3.8 中央本線 土岐〜瑞浪 P:松沼 猛
JR東海は気動車のキハ40系・キハ11形も白ベースに湘南色帯を塗装していましたが、現在は全車引退しています。また、現在導入中の315系により、211系5000番代・213系5000番代を淘汰する計画となっているため、JR東日本からの乗り入れ車両を除き、JR東海の路線から湘南色は姿を消す見込みです。
JR東海が関西本線用に導入した213系5000番代も湘南色帯を採用。現在は飯田線・中央本線で活躍しています。 ’17 6.7 中央本線 岡谷 P:寺尾武士
以上のように、場所や時代背景によって変化はあったものの、各地で活躍を続けてきた湘南色の車両たち。第3部では各地の保存車両や意外な場所で登場した湘南色の車両をご紹介します。アップは明日の朝を予定していますのでお楽しみに!