特集・コラム

第4回 激動! 185系開発会議

2021.01.13

■急行型を意識して計画された新形式電車「185系」

 国鉄では、具体的な車両新製配置要請は一応の検討を終わった段階で本社に「車両増備要求調書」という形でなされる。国鉄本社としても首都圏において老朽化が進む153系電車の取り替えには真剣に取り組み、置き換えの具体的計画も了解して本社常務会での決定に向けて積極的に取り組んでくれた。

185系は当初、急行型電車の単純取り替えを目的として設計されていた。写真は日本車輛豊川製作所にて落成時もの。

’81.8.6 飯田線 豊川 P:細矢和彦

 新形式車の諸元については実際にこの車両を使用して営業することになる鉄道管理局の営業・運輸部門などがさまざまな要請を出すことになる。なかでも、どうしても避けて通れないのは、置き換え過程における新形式電車と従来車153系の混結であり、協調運転装置の設置は最初に盛り込んでもらえることになった。これにより基本的な置き換え計画は最大の難関をクリアできることになった。
 この計画を本社に要請した時点では、関係者は急行「伊豆」の単純置き換えを考えていたことは間違いない事実であった。これを受けた本社でも当初は急行での使用を前提に車両構造などの設計側との検討を始めていた。当時は特急列車の固定座席を良しとせず簡易リクライニングを採用したり、新幹線においてさえ転換クロスシートを嫌い集団離反形の固定配置にしてまでリクライニングに改造していた時期であった。そのため、最初から特急用であるならば改めて転換クロスシートを採用する理由はなかったが、185系は転換クロスシートを採用した。そのほかにも、空調設備の発達した時代にあって、窓を開閉可能としたことからも急行用を意識していたことは間違いないだろう。
 また、その性能についても通勤列車使用を狙ったものとしても歯車比を近郊電車並みとして、最高速度を110Km/hと低く抑えたのも153系、165系など従来の急行用電車と同一レベルのものを志向したものであることは事実である。もっとも、通勤電車として使用するということも、ごく自然にそれらのスペックを位置づけたといえる。

▲185系・183系特急型電車と165系・153系急行型電車の性能比較。

■突如浮上した急行「伊豆」の特急格上げ計画

 本社での車両新製計画は運転局、旅客局、工作局などの関係者が「車両計画会議」を繰り返し行って、最終的には設備投資計画として常務会に付議して決定されることになる。「車両計画会議」の最初の段階までは、新形式電車も153系電車の単純取替で進んでいた。しかも、このなかで一応の車両構想が設計側から出されるのが普通であったから、急行型電車の取り換えというコンセプトでの設計はすでに進捗を見ていた。そこには、直近に製造された117系電車に採用された新技術などが当然取り入れられることになった。
 しかし、計画を進める過程で旅客局から新形式電車の投入を機に伊豆方面への高速列車体系を整備する方針が打ち出された。この方針に従い急行「伊豆」は全面的に特急格上げを行うという本社としての経営判断がなされることになった。こうして、新形式電車は特急形式追番の185系電車となり、特急格上げ案とともに常務会に付議され了承されることとなった。
 すでに準備した設計案からの変更はほとんどなく、今後の近距離特急の車両は、汎用性の高いこのような形もあって然るべきであるという考え方の整理がなされた。

▲183系特急「あまぎ」と離合する185系。

’81.9.1 東海道本線 早川~根府川 P:aka
185系思い出ギャラリーより

本文:大熊孝夫 要約・再構成:RM レイル・マガジン334号より

🔶第3回 153系大量置き換え計画、始動
🔶第5回 185系誕生前夜

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