特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:1-6 御殿場線 岩波駅

2021.01.09

取材日:’20.10.27
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジン2021年1月号から新連載となった「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介して参ります。連載第1回でお送りしているのは、JR東海の御殿場線。そのWEB編6回目では、前回の松田駅から一気に西進し、御殿場駅の3駅先、岩波駅とその周辺を見ていきましょう。

▲岩波駅の特徴的なガラス張りの橋上駅舎。この右手に新設されたばかりの地上駅舎もある。

 スケジュールの都合で御殿場線の端である国府津駅もしくは沼津駅からではなく、中間の御殿場駅から取材を開始し、順次国府津方(上り方)に進んできたのですが、ここで大反転した形です。しかし秋の日は釣瓶落とし、早くも陽光は赤みを帯び、気を焦らせます。ということで、岩波駅自体は通りがかりに見た程度。本当に見てみたかったのは、廃線跡ファンには著名な、トヨタ自動車の「東富士工場専用線」跡でした。

▲御殿場線と専用線の分岐点から間もないところ。手前のコンクリート製橋台が元の専用線のもので、比較的近年まで橋桁が残されていた。

 この専用線は岩波駅の国府津方約1kmのところから西方に分岐し、国道246号、東名高速道をアンダーパスして大きく反時計回りで回り込んで現在のトヨタ自動車東日本東富士工場へ延びていました。供用開始は1969年で、モータリゼーションの全盛期に誕生し、貨物輸送手段のシフトによって1982年には廃止。その間、この工場の会社名は関連会社である関東自動車工業でしたが、トヨタの完成車の運搬に用いられ、ク5000形が行き来をしていたのです。

忽然と橋の上に姿を現した線路。人の手によって整備された痕跡もある。

 本連載ではこれまで戦前に放棄されたかつての複線跡の数々を見てきましたが、ここは比較的近代的な(?)廃線跡という点で趣を異にしています。この辺りは道路があまり線路には沿っておらず少々迷いながら近づいていきますと、あるガード下からそれらしいカーブを描いた築堤に沿う小道が見つかり、そのまま奥に進んでいくと国道246号バイパスの高架のあたりでどん詰まりとなります。明確な立ち入り禁止表示や柵などはなく、そのまま築堤の上に登って進むと、久保川に架かる小ぶりなコンクリート橋、その上にはくっきりと線路が残されていました!

▲久保川に架かる橋を側面から見る。コンクリート製の近代的な様式。奥の工事現場は246号バイパス。

 バラストが見えなくなるくらい雑草には埋もれていますが、線路と護輪軌条の計4本のレールがスッと先まで延びています。伐採や除草の痕跡はあり、人の手による管理はある程度されている模様。ただし線路のど真ん中に木が生えてしまっていました。

▲東名高速道のアンダーパス部にくっきり残る完全な線路跡。前後は途切れているが、この範囲だけはなぜか整備されているようだ。

 橋を渡り農道をクロスした先に、東名高速道路のアンダーパスがあり、その部分だけは奇跡のように雑草も生えない状態で道床・枕木・レールが完全な状態で残されています。魅力的なカーブを描いてその先の雑木の中に溶け込んでいく様子は幻想的とも言える光景でした。

 ちなみに、この専用線のかつての終点だったトヨタ自動車東日本 東富士工場は、去る2020年末で閉鎖され、跡地には自動運転などの次世代技術を実証する仮想都市「ウーブン・シティ」が整備される計画だそうです。

🔶レイル・マガジン2021年1月号(446号)新刊情報

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