text & photo:ふくしま・さぎす
取材日:’20.12.10
2021年春のダイヤ改正でデビューする特急「湘南」と引き換えに廃止が発表された「湘南ライナー」。その派生列車の一つである「おはようライナー新宿」も、朝の通勤時間帯に運転される定員制の列車となっており、来年春の廃止が発表されている。
今回はその中でも、その運行区間の大半が貨物線というユニークな運転経路となっている「おはようライナー新宿26号」の様子をレポートしていく。
▲小田原駅で発車を待つ「おはようライナー26号」。
■かつては251系で運転された「おはようライナー新宿26号」
2020年3月のダイヤ改正で「サフィール踊り子」用車両、E261系に置き換えられた251系は、この改正まで「おはようライナー新宿26号」にも充当されており、一部のレイル・ファンの中では貨物線を前面展望できる列車としても知られていた。この列車は新宿駅で折り返し「スーパービュー踊り子3号」となる実質的な送り込み回送を兼ねていた。
▲「おはようライナー新宿26号」として走る251系(右)。
‘20.2.10 山手線 恵比寿〜渋谷 P:黒澤 鉄
(今日の一枚より)
251系の引退により、2020年3月の改正から「おはようライナー新宿26号」は185系に置き換えられ、折り返し列車も新宿発「踊り子5号」となっている。
■乗車ルールは「湘南ライナー」と同じ
乗車のルールは「湘南ライナー」と同様、発車5分前までに乗車整理券を購入しておく必要がある。ただ、朝のライナーは利用率も高いため、乗車日の前日に購入しておくことをおすすめしたい。ライナー券売機はライナー停車駅の各駅構内に設置されており、こちらも東京駅の券売機同様「残り席数」が表示されるシステムとなっている。
また、ライナー券のほか通常の普通車グリーン券でグリーン車に乗車できるのも「湘南ライナー」と同じだ。
■小田原~新鶴見(信)間は貨物線を走行
7:41、ホームに「おさるのかごや」の発車メロディーが流れると、列車はゆっくりと小田原を発車した。始発駅ということもあり車内は私一人の貸切状態だった。小田原を出るとすぐ貨物線に入った。ここから新鶴見(信)まで東海道貨物線を走行する。ただし、「貨物線」とは言うものの、小田原~東戸塚間は旅客線の横に設けられた複線を走行するため、複々線区間となっている。本来貨物列車が走る線路を走行するため、車窓から貨物駅がすぐ近くに見られるなど、ならではの見どころも多い。
▲相模貨物駅のすぐ横を通過するなど貨物線ならではの見どころも。
■横浜羽沢、新鶴見機関区、貨物ファンにはたまらない車窓!
「おはようライナー新宿26号」の乗車可能駅は小田原、平塚、茅ケ崎、藤沢の4駅のみとなっている。それぞれの駅でまとまった数の乗客が乗ってくる。また、下りの「湘南ライナー」とは違い、藤沢発車後は渋谷までノンストップで駆けていくため乗客の入れ替わりは、ほぼないのもこの列車の特徴だ。
途中東戸塚付近から東海道貨物線は東海道本線と分岐して内陸に入り、長いトンネルを走行していく。
ここから横浜羽沢までは、東海道貨物線の中でもこの新宿・渋谷方面発着のライナーと限られた臨時列車しか旅客列車が走行しない区間となっている。長いトンネルを抜けると一瞬だけ車窓が開ける場所が、横浜羽沢だ。
▲横浜羽沢駅には、かつての荷物列車用のホーム建屋が残る。
横浜羽沢を通過すると、相鉄直通線と合流し再びトンネルへ。鶴見付近でトンネルを抜けるとこれも東海道本線の貨物支線「品鶴線」に入る。鶴見川を渡ると新鶴見機関区の横を通過し、武蔵小杉からは「湘南新宿ライン」と合流する。ちなみに、「おはようライナー新宿」は2002年まで「湘南新宿ライナー」の愛称がついていたが、前年に運行開始した「湘南新宿ライン」との区別化のため「おはようライナー」に愛称変更された経歴を持っている。
■新宿駅では651系と並びも…
大崎からは山手貨物線を走行していく。この日は京浜東北線内の遅れの影響を受け10分程度遅れて渋谷に到着。渋谷を発車すると、ほどなくして終点新宿に到着した。
▲新宿では高崎線から来た「スワローあかぎ4号」の回送と並ぶ。
先述の通り、「おはようライナー新宿26号」は折り返し「踊り子5号」となり、送り込み回送を兼ねている意味合いも大きい。ただ、朝の通勤時間帯に貨物線を通り都心へショートカットできる列車は、非常に便利と言えるだろう。