text & photo:RM
取材日:‘21.9.20
取材協力:都電カフェ
都電荒川線・三ノ輪橋電停最寄りの「都電カフェ」では、鉄道写真家・南 正時さんの写真展、ノスタルジックヨーロッパ「TEE・TRANS EUROP EXPRESS TRAINS」を開催中だが、その記念トークショーが9月20日(月・祝)、会場内で開催された。
▲映画『ヨーロッパ特急』のアイキャッチ画面を投影する中、映画にまつわるエピソードを語る南さん。
南さんと言えば、1970年代中頃から精力的にヨーロッパ取材を敢行してきたこの分野の第一人者。しかもその準備は周到で、まずは列車に乗って車窓をじっくり眺め、撮影地をロケハン。翌年以降の訪問で改めて目星を付けておいた場所で走行写真を撮影したという。そうしたスタンスは日本国内での撮影行と同じだったのだろうが、もちろん苦労は何倍にもなったはず。例えば、良さそうな場所を見つけたら次の通過駅の駅名をメモするのだが、すべてのスペルを一瞬で覚えられるはずもなく、頭の3文字だけをメモし、宿にて地図と照合してようやく駅名を確定していた…などというエピソードが披露された。
▲ウイルス対策で、本来の定員よりは少ない観客20名限定で開催されたトークショー。飲食店が会場、時間帯が夕食時ということもあり、料理や飲み物に舌鼓を打ちつつ、ショーを満喫されていた。
トークショーの冒頭では、南さん自身が8mmで撮影したフィルムを編集した短編映画『ヨーロッパの特急列車 TEE」がノーカットで披露された。スチルカメラと8mmのムービーカメラを同時に構えて撮影されたもので、8mmとは思えない画質の良さがご自慢とのこと。編集がおおすみ正秋さん(アニメ『ルパン三世』の初期の演出担当)、ナレーションが歌手の松島トモ子さん、という豪華なスタッフであったことにも驚かされる。
▲南さん制作の短編映画が全編上映された。
そして映画と言えばもうひとつ。1984年にメジャーな邦画として公開された『ヨーロッパ特急』も今回のテーマから言えば外すことはできない。当時のヨーロッパにおける有名列車の数々が画面の中でふんだんに活躍するだけでなく、武田鉄矢さん演じる主人公が、南さん自身をモデルとした鉄道写真家という設定で、劇中で描かれるいくつかのエピソードは南さん自身の実体験に基づくものであったという。もっとも、南さん自身は映画のようなロマンスはなかったけどね、と言って観客を沸かせていた。
▲『ヨーロッパ特急』映画公開時のイベントで、主人公の武田鉄矢さん(写真中央)と並ぶ南さん(写真左)。写真右は、鉄道ジャーナル誌の竹島編集長(当時)。
後半は場内に展示された作品に関するギャラリートークとなった。20名限定で来場した観客の方はもとより海外鉄道に造詣の深い方が多く、かなりマニアックな会話のやり取りから、オフレコで語られた撮影秘話までが引き出され、終了後の観客の皆さんの満足度は高かったようだ。
▲RM最新号でタイミング良く連載スタートとなった「TEE諸国漫遊」のページを手に、意気込みを語る南さん。
この写真展、当初は9月26日までの開催予定であったが、好評につき10月中旬(正式な日程は未定)までの延長が決まり、トークショーも再度開催を目指しているとのことである。
▲都電カフェの店内には、都電をはじめとする鉄道部品や資料類が展示されている。
なお、レイル・マガジンでは9月21日発売の2021年11月号(451号)より、南さんによる新連載「TEE諸国漫遊」が掲載されている。第1回は数あるTEEの中でも抜群の人気を誇る西ドイツの「ラインゴルト」をたっぷり紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。
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