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BOOK REVIEW 寝台特急追跡乗車記〔天夢人〕

2022.08.01

 1970~80年代にかけて、小中学生向けのあらゆる娯楽・趣味分野を対象としたハンディサイズの分厚いシリーズ本が全盛を誇った。勁文社(ケイブンシャ)の「大百科シリーズ」、小学館の「コロタン文庫(書名としては「全百科」)」が二大巨頭で、その両者において鉄道を扱った巻はいずれも好評を博し、現在40~50代のレイル・ファンの多くの方に大きな影響を与えたと言っても過言ではない。

 プロ鉄道写真家の南 正時さんは、このうちケイブンシャの「大百科シリーズ」のメイン筆者を長年務めた。毎年のように手を変え品を変え新刊を編み出すのだが、名物企画となっていたのが寝台特急の乗車ルポ。当時の国鉄の全面協力があり、機関士の点呼から始まり機関車の出庫、客車への連結、始発駅への回送…といったシーンまで密着で取材されていた。当時はおおらかな世相だったこともあり、乗客が思い思いに車内で過ごす自然な姿も記録されている。

 本書のメインはそれら「大百科」のためのレポートを、デジタルリマスターの上での再現したものである(「大百科」シリーズの写真印刷のクオリティは、今思うとさほど高くはなかった…)。1970年代の「富士」「あさかぜ」「出雲」「さくら」を代表とし、まさにブルトレブーム全盛期がタイムカプセルで蘇ったかのような臨場感が味わえる。1980~2010年代の取材記事も収録されているが、だんだん制約が増えて…というのは著者の述懐にもある通り。いろいろな意味で古き良き時代を回顧する一冊となっている。

■南 正時 著
■発行:天夢人/発売:山と渓谷社

■A5判/160ページ/2,200円(税込)

天夢人WEBサイト

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