小田急グループの大山観光電鉄株式会社は、今年で開業50周年を迎えるのにあわせ、車体を新造する。同社における車体新造は、1965(昭和40)年の開業以来50年ぶり。 デザイン設計は、小田急ロマンスカー・VSE(50000形)、MSE(60000形)、箱根登山鉄道”アレグラ号”(3000形)などを手掛けた岡部憲明アーキテクチャーネットワークが担当している。 新型車体のデザインコンセプトは、”大山の特色ある眺望・景観を取り込んだ展望車両”。眼下に海を望む山下側には、車体前面から屋根面に連なる大型曲面ガラスを採用し、開放感を演出する。また、車体前面を絞った構造とすることで、大山の特色ある眺望をフレームで縁取った美しい記念写真のような前面展望として提供する。また、展望席を6席(乗務員室開放時は8席)に増やす。 新型車体の概要は次の通り。■デザインコンセプト ”大山の特色ある眺望・景観を取り込んだ車両”■カラースキーム 大山のまばゆい新緑、燃えるような紅葉をはじめとした大山の四季の自然に映える「ブリリアント・グリーン(brilliant green)」を基本色とし、ケーブルカー2輌の固有色を「ゴールド」と「シルバー」として、それぞれの前面と側面に配色する。 室内空間は、ヴォールト(ドーム)型を取り入れ、豊かな広がりを持たせる。天井部には木目調の材料を使用するとともに、座席や床材には緑を基調とした配色をすることで、自然に包まれた落ち着いたやさしい雰囲気を醸成する。■特徴①眺望性○大型ガラスの採用 山下側の車体前面及び屋根面に大型曲面ガラスを採用することで、開放感あふれる眺望を満喫することができる。また、側面および山上側の車体前面にも大型ガラスを取り入れ、大山の大自然の中に溶け込むような雰囲気を演出する。○展望席の設置 山下側に展望席を設置する。山下方向走行時(大山ケーブル駅行き)には6席、山上方向走行時(阿夫利神社駅き)には乗務員室を解放して8席を展望席として利用することができ、車内から眼下に広がる相模湾の眺望を楽しむことができる。○架線レスシステムの導入 現在は線路上に2本の架線を架設し、車内電力用および保安通信用として使用しているが、以下の設備を導入することで、眺望を阻害していた架線を撤去する。 ◎リチウムイオン電池搭載、剛体架線の架設 照明や放送装置等の車内電力は、車輌に搭載したリチウムイオン電池から供給し、給電施設として各駅に剛体架線を架設し、駅停車中にリチウムイオン電池を充電する。 ◎誘導無線方式の採用 保安通信用として、車輌に誘導無線の車上局とアンテナを搭載し、枕木上面に通信用ケーブルを敷設することで、無線方式で信号・通話関係の情報を送受信する。②居住性○室内ボリュームの拡大パンタグラフを山上側に移設することで、中央部から山下側にかけての天井高さの拡大が可能となり、豊かな広がりのある居住空間を実現する。○LED照明の採用・夜間運転時の消灯 室内灯には電球色のLED間接照明を採用し、室内全体をやさしい明るさで演出する。夜間は室内照明を落として運行することを標準とし、大型ガラスを通して大山の夜景を楽しむことができる。また、LED照明により省エネ化も図る。○スムースな乗降の実現 車内の階段の高さを、従来の最大240mmから160mm以下に改善し、お年寄りやこどもも移動しやすい空間を実現する。また、乗降扉の自動化や扉位置の変更により、混雑時のストレス緩和を図る。○バリアフリー化の推進 車いすスペースの設置や、自動扉開閉時のドアチャイム・ドアランプを導入し、バリアフリー化を推進する。■車体概要○製造輌数 2輌○運行開始 2015(平成27)年10月1日(予定)○車輌デザイン 岡部憲明アーキテクチャーネットワーク○製造 小田急エンジニアリング、川崎重工業、大阪車輌工業 なお、2015(平成27)年5月18日から同年9月30日までの期間、大山ケーブルは大規模設備更新工事のため運休となる。▲山下側から見た外観イメージ。左が「グリーン」と「ゴールド」の1号車。右が「グリーン」と「シルバー」の2号車。 画像:大山観光電鉄 ニュースリリースより(以下2点とも)▼山上側から見た外観イメージ。▲大型ガラスを採用することで開放感あふれる眺望となる、山下側客室内イメージ。●大山観光電鉄 ウェブサイト