世界中でお前の好きな電車を言え! と言われたら私は躊躇なくこの電車を挙げる。33‰の連続勾配もなんのその、平坦区間では110km/hで疾走。200馬力のモーターを装備、4M2Tの6連で大阪上本町から宇治山田、後には鳥羽まで足を伸ばしたわが国電車史上歴史的な名車である。先頭車はもとデトニと呼ばれた荷物室とコンパートメントの特別室、後ろ半分はクロスシートの一般席であるが、戦前の国鉄二等車並のデラックスさを誇った。そして何よりも大型パンタグラフを振りかざした豪快なスタイルがいっそう魅力的であった。昭和5年から16年にかけて製造された戦前型は1975(昭和50)年11月23日の新青山トンネル開通の前日に惜しまれつつも引退した。 ’67.5.28 近鉄 大阪線 安堂-河内国分 P:永野晴樹