text & photo:鉄道ホビダス編集部
取材協力:東日本旅客鉄道株式会社 八王子支社
オレンジ色の帯でお馴染みの中央線を走るE233系は、首都圏各地の通勤・近郊路線で活躍するJR東日本の主力車両の一つです。そんな現役まっただ中の車両を実際に運転できるイベントが2023年5月27日(土)、28日(日)の2日間にわたって開催されました。乗客として日常的に利用していながら、運転する機会は皆無に等しい鉄道。そんな貴重な体験ができるイベントの様子をレポートいたします。
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■電車の運転のため、いざ拝島駅構内電留線へ!
今回このイベントが開催されたのは拝島駅に隣接する構内電留線(留置線)内です。車両がある場所までは駅ホームの柵の外へ行き、実際の乗務員さんと同じルートで向かいます。途中、一般の人は立ち入れない構内踏切「拝島構内踏切」も通過し、普段の趣味活動ではまず味わうことができない非日常を感じることができました。
踏切を渡って歩くと、まだできたばかりの真新しい拝島駅構内電留線が見えてきます。バラストや架線柱もまだ綺麗な状態で、そこを行き交うE233系も相俟って非常に写真映えのするスポット。今回の参加者の皆さんも思い思いに写真を撮られていました。
ちなみに、今回の参加者は様々な年代の方がいらっしゃった印象があり、改めて中央快速線系統のオレンジ色の電車が、幅広く愛されているのを感じ取ることができました。
■講習を受け、いよいよ運転へ
その後詰所内に案内され、講習として基本的な電車の運転操作を習います。電車の運転は自動車などとは異なり、「マスターコントローラー(マスコン)」と呼ばれる手元のレバーで操作するため、その取り扱いについて動画で学びます。
今回運転操作をする中央線のE233系0番代は、左手のみでブレーキ・力行(アクセル)を制御する「片手ワンハンドルマスコン」と呼ばれる運転台を持っており、それを模した模擬運転台でまずは練習します。
■停止位置目標にピタリ!運転技法を肌で体感!
さて、いよいよ運転体験本番です。運転台には実際に運転士をされている社員さんが同乗し、その場でレクチャーを受けながら運転します。運転できるのは電留線入口から車止め方向への120m。速度制限は10km/hで、走行中使用できるノッチはブレーキ2段・惰行・力行1段で、これらを使い分けて目標に合わせて停車させます。わかりやすいよう、ブレーキポイントには黄色いボード、停止目標にはオレンジのボードが線路脇に立っており、これを目安に運転することができます。
また、車止め方向へ運転を終えた後、電留線入口まで折り返し戻る際は同じ運転台で車掌体験も可能。ドア開閉のみならず、マイクを使った車内放送もできました。しかもこれを最低4往復分体験することができた上、運転・車掌の様子は、参加者手持ちのスマホやカメラで撮影してもらうこともでき、まさに至れり尽くせり。幼い頃の夢だった方も多いであろう「電車の運転士さん」と「車掌さん」に、本物の電車を使って体験することができる素敵なイベントでした。
今回実際に参加者が運転する電車の様子を後ろで体験してみましたが、皆さん勘所をしっかり押さえた運転をなされていた印象がありました。特に停車時は回数を重ねるごとにスムーズかつ正確な停車となっていき、多くの回数を体験できる故に、満足度の高いイベントだったのではないかと思いました。
■運転体験イベントはどのようにして開催されたのか…?八王子支社さんに詳しく聞いてみた!
▲2022年7月に同じく拝島電留線で開催された撮影会「新しい車庫を撮りに行かNightナイト ~夜の拝島電留線撮影会~」。中央線と拝島駅ゆかりの車両が一堂に会した。
‘22.7.10 拝島電留線 P:東條ともてつ
今回の運転体験イベントはどのようにして実現に至ったのか、楽しんでほしいポイントなど、今回企画に担当した八王子支社さんに詳しく聞いてみました。また、近年盛り上がりを見せている鉄道会社企画の有料鉄道イベントですが、今後の展望についてもお伺いしてみました。
●発案者、検討期間など、開催に至る経緯を教えてください。
中央線・青梅線・五日市線を乗務する運転士が所属する立川運転区社員がお客さまに「本物の電車」を運転するという特別な体験をしていただくことで、鉄道の魅力を伝えたいという思いから企画・実施に至りました。
●中央線用E233系0番代の体験運転はこれが初でしょうか?
中央快速線E233系0番代の体験運転は初めてとなります。また、八王子支社では、お客さまが実際にハンドルを握り運転操縦をするのも初の開催となります。
●今回の企画で特に楽しんでもらいたいところはどこですか?
あれだけ大きくて、重たい車両を、自分の手で操作するという喜びや感覚は他では味わえません。私たち運転士も、最初に電車を運転したときの感覚は今でも覚えています。そういった感覚を感じていただければと思います。
●運転する際のコツ(気をつけていること)があれば教えてください。
運転に関わる大切なルールを順守するという事に尽きると思います。信号や運転速度を守ることはもちろんですが、機器を正しく取り扱って、どんな時でも適切な対応ができるようにしておくことこそが「コツ」であり、私たちが守り続けていかなければならないものだと思って運転しています。
●一般の方が運転するにあたり、必要な対策や安全設備などありますか?
操縦方法や機器の説明は、体験前に係員が説明するので、事前の準備は必要ございません。また、実施にあたり安全対策の仕組み作りは入念に行ってまいりました。体験中も常に係員が付き添い、指導を受けながら運転を行なっていただくため、安心してご参加ください。
●今後八王子支社に所属する別車両での運転体験など可能性はありますか?
現時点では、予定はございませんが、イベント開催が決まった際には、プレスリリースに発表させていただきます。
●気になる今後のイベントの展望を教えてください。
リアルな活動が再開される中、立川運転区では、コロナ禍以前にも無かったリアルな体験をお客さまにご提供していきます。車両・施設・設備など、当社のリソースを活かし、本物にこだわった企画で鉄道ファンの皆さまのご期待に応えていきたいと思います。
今回も大盛況で幕を下ろしたE233系運転体験イベント。今後もより、私たちレイル・ファンを楽しませる魅力的な企画展開に注目していきたいですね。
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