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特集・コラム

その歴史は塗り替え品から!?江ノ電に見る事業者限定プラレールの始祖!

2023.06.02

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!現在では各社から発売されている事業者限定品のプラレール。その歴史は1999年まで遡れます。今回はその初年、江ノ島電鉄から発売されたとあるプラレールについて見てみます。


 プラレールは基本的に実在の車両をモデルとしています。通常ラインナップとして製品化されるのは新幹線や特急車、通勤車を始めとした、全国的または各都市圏で有名な現役の車両たちです。対して、地域色の強い車両は全国発売しても売れるとは限らないため、通常ラインナップとして発売される事はなかなかありません。

 そこで、全国の鉄道会社を始めとした事業者が企画した「事業者限定品」のプラレールが1999年に登場し、初年は小田急電鉄、江ノ島電鉄、京浜急行電鉄の3社が参入しました。今回はそのうち、江ノ島電鉄が発売した最初のプラレールと、それに始まる江ノ電製品の発展について紹介します。

↓意外に似合っている!?塗り替え品の「えのでん」写真はこちら!↓

▲1999年発売の「えのでん」

 事業者限定品の初年となる1999年。小田急電鉄が3100形NSEの引退を記念して「小田急ロマンスカー さよなら3100形記念モデル」を発売して大ヒットを記録しました。形式名にあやかり用意した3100個が飛ぶように売れて完売し、話題になりました。

 続いて京浜急行電鉄が羽田空港駅の開業を記念して、既存の「通勤電車」を塗り替えて同社600形に寄せた「羽田空港駅開業記念モデル」を発売しました。この京急600形は実車とは似ても似付かぬものでしたが、これも大ヒット。翌年に商品名と仕様を変えて再販するほどでした。

 そして同年に発売されたもう一つの事業者限定品が、今回紹介する「えのでん」です。1997年に「プラレールの日」限定品として発売された、都電6000形をモデルとした「ちんちんでんしゃ」の塗り替え品になります。

 当時は事業者限定品の黎明期で、専用の金型を起こすよりも既存の金型を使って「自社の車両に似せる」ことを目標としていたようです。前述の京急600形はもちろん、この「えのでん」も箱にあしらわれている300形とは全く似ていませんが、ちゃんと雰囲気が出ているのが面白いところです。「えのでん」もヒットを記録し、翌年に京急の例と同じく多少の仕様変更を施した上で再販されています。これは偶然なのか、はたまた「伝わる人には伝わればいい」と考えていたのかは不明ですが、「タンコロ」として知られる江ノ電100形のデビュー時の姿がプラレール「えのでん」の姿にそっくりであるため、製品の違和感の無さに一役買っているものだと考えられます。行き先表示もしっかり再現され、先頭車は「鎌倉」、後尾車は「藤沢」とされており、通常ラインナップではやりにくいこだわりの仕様が伺えます。

 「ちんちんでんしゃ」では都電の帯色に合わせたと思われる赤い車輪を装備していましたが、「えのでん」は窓周りのクリーム色に合う黄色車輪に変更されており、単なる塗り替えとは異なる差別化が図られています。ちなみに「ちんちんでんしゃ」はその名の通りベルの音を鳴らしながら走る機構が内蔵されているため、塗り替え品となる「えのでん」も同様にベルの音色を鳴らしながら走る愛らしい製品に仕上がっています。

 江ノ電は2001年に自社独自の金型を起こし、300形を発売しています。2002年にはプラレールとコラボしたラッピング仕様の初代500形を事業者限定品として、全国流通品では通常仕様にして「江ノ電 海の見える旅セット」として発売しました。2両目にサウンド機能を搭載した「サウンド江ノ電1000形」「サウンド江ノ電500形」は全国流通品の車両単品として発売されており、江ノ電の製品は単品・セットを含めると2023年までに19種類を数え、単一事業者としては大所帯に成長しました。

▲「ちんちんでんしゃ」と「えのでん」

 1999年に参入した3社のうち、小田急電鉄は引き続きロマンスカーを通常品に乗せて通勤車は限定品に、京浜急行電鉄は限定品のみに注力、江ノ島電鉄は限定品と通常品を並行して展開するなど、メーカーのマーケティングとの兼ね合いもあると思いますが独自の商品展開を続けています。今となっては一般的な限定プラレール。その歴史はこのような始まり方だったんですね。

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