185系

特集・コラム

もうそんなに経った!?鉄道車両30年選手たちの現在と今後はどうなる?

2023.02.05

text:鉄道ホビダス編集部

 1990年代の初頭、平成も始まったばかりのこの頃にデビューした鉄道車両は、その後に大きな影響を与えたエポックメイキングな車両が多く登場していたように感じます。また、国鉄からJRへの民営化直後ということもあり、各社それぞれが個性的な車両を多く打ち出した頃でもあります。
 そんな90年代初頭の終わりである1993〜1994年という年から2023年で30年近くが経過。今見ても古さを感じない車両が多い中、更新時期に来ている頃でもあります。今回はそんな「アラサー」となった鉄道車両たちについて詳しく迫っていきます。

↓アラサーの車両たちの写真をいっき見!↓

■ステンレス通勤型電車の歴史が変わった!209系

‘10.1.24 京浜東北線 さいたま新都心 P:黒河内裕貴
(鉄道投稿情報局より)

 試作車である901系に端を発し、その後量産車として発展した通勤型電車がこの209系です。京浜東北線と南武線に0番代が導入されると、派生番代がその後JR東日本の各線に導入されました。さらに近郊型のE217系や、交直流のE501系、そして209系をさらに発展させた一般型電車としてE231系、E233系、E235系、そしてそれらをベースとした他社車両へと続いていきます。
 そんな209系も0番代の登場からは2023年で30年。0番代自体は消滅していますが、これらを種車とした2000番代・2100番代が房総各線で活躍しているほか、2100番代を譲受した伊豆急3000系も2022年に登場。さらに派生番代である500番代、3500番代・1000番代のほか、観光列車の「BOSO BICYCLE BASE(B.B.BASE)」に試験車の「MUE-Train」と、まだしばらくは彼らの活躍を見ることができそうです。

■新型置き換えも間近か?西武10000系「ニューレッドアロー」

‘93.11.6 南入曽車両管理所 P:RM
(台車近影より)

 西武101系、新501系、5000系などの機器を流用し製造されたのがこの西武10000系「ニューレッドアロー」です。池袋線系統では特急「ちちぶ」「むさし」として、また新宿線系統では「小江戸」として運行されていました。ですが、後継となる特急車の001系「ラビュー」が登場したことにより2020年に池袋線から撤退。現在では新宿線の「小江戸」でのみ活躍を続けています。

 なお、富山地方鉄道には3両に短縮の上譲渡。形式も新たに「20020形」として現在運行されています。また偶然にも西武で先代「レッドアロー」として活躍をしていた5000系の車体を活用した16010形との新旧顔合わせも実現。1995年の5000系引退以来の並びにレイル・ファンが沸き立ちました。

■特異なフォルムは唯一無二!787系・883系

‘92.7.9 竹下 P:RM
(台車近影より)

 1992年に787系が、そして1994年には883系が登場しました。787系登場当時は、特急「有明」の西鹿児島(現鹿児島中央)駅発着列車を分離した特急「つばめ」用に開発された車両です。由緒ある「つばめ」の名前に負けることのない斬新なエクステリアと、セミコンパートメントやビュフェなどを装備した豪華な内装が話題を呼び、1993年にはブルーリボン賞を受賞。さらに1994年にはJR東日本の大宮工場で実車が展示されるなど、当時を振り返るとその人気ぶりが伺えます。

 883系は特急「ソニック」で活躍する交直流電車で、1994年に落成、翌1995年に「にちりん」として暫定運用を開始。その後「ソニックにちりん」として営業運転を開始しました。前面にはパネルを被せ、それぞれ製造された時期で色や形が異なっており、乗客の目を楽しませていました。その後2005年よりリニューアルが開始。インディゴブルーメタリックに全塗装され、前面パネルの色違いは消滅してしまいましたが、形状違いは今も見ることができます。

■相鉄直通後はどうなる?都営6300形

‘93.5.19 志村検修場 P:RM
(台車近影より)

 都営6300形はそれまで非冷房で残されていた一部の6000形を置き換える目的と、その後2000年に開業する東急目黒線との直通運転を見据えた車両として1993年に登場した形式です。大まかに1993〜1994年に製造された「1・2次車」と、1999〜2000年に東急目黒線直通を前に増備された「3次車」と分けられ、それぞれ細かく仕様が異なっています。さらに内装では1・2次車では車端部にクロスシートを設置しており、異彩を放っていました。

 そして2023年3月、ついに相鉄・東急直通線が開業し、羽沢横浜国大から新横浜を経由し日吉で両線が1本につながります。そして三田線とも直通運転を開始する予定になっており、それまで6両編成だった同路線の車両ですが、新型の6500形は8両で登場しました。そんな中で1993〜1994年製造の「初期車」とも言われる1・2次車は既に全車が運用離脱、一部には廃車が発生しています。なお1999〜2000年に製造された3次車に関してはまだ現在も運用を続けており、今後の動向が注目されます。

■JR東日本の特急型初のVVVF車である255系

‘22.11.23 鹿島線 潮来~延方 P:三邊幸平
(鉄道投稿情報局より)

 「房総ビュー」の愛称で親しまれている特急型電車の255系も、2023年7月でデビューからちょうど30年を迎えます。255系はそれまでの房総特急のイメージアップ、並びに183系の置き換えなどを目的に製造された車両で、9両編成5本が落成。現在でも全車が活躍しています。
 車体断面は先輩格に当たる253系と共通としており、側面からの印象は両車共に似ています。そんな中で253系から進化もしており、255系はJR東日本の特急型電車で初めてとなるVVVFインバータ制御を採用しました。製造時のVVVFインバータのメーカーは東芝製で、その特徴的な音に魅了された人も少なくないのでは?
 ちなみにJR東日本で「E」が付かない最後の新系列がこの255系になります。

 なお2023年2月現在、置き換えといった大きな発表はなく、床下機器に関しても2014年頃から2016年頃にかけて更新工事を行なっているものの、車齢を考えるといつ動きがあってもおかしくはないとも言えます。房総ビューの行く末に注目していきたいですね。

■30年の月日を感じない「近未来感」南海50000系「ラピート」

‘14.6.29 南海電気鉄道 住ノ江車庫 P:鶴岡和幸
(鉄道投稿情報局より)

 1994年の関西空港開港に伴い登場した車両がこの南海50000系「ラピート」で、6両編成6本が製造されました。その外観は今までの鉄道車両の常識を覆すような斬新なもので、ロボットアニメに出てきそうな前面意匠のインパクトはさることながら、側面客窓は四角ではなく楕円形、車内も屋根の形状は弧を描いており、その外観も相俟って近未来的な雰囲気を感じられるものとなっています。
 さらに近年では車体ラッピングも積極的に行なっており、2014年にはラピート20周年企画としてアニメ「機動戦士ガンダムUC」とタイアップ。「赤い彗星の再来 特急ラピート ネオ・ジオンバージョン」として車体色をワインレッド一色に染め、ロゴなどもラッピング。さらに同じく20周年企画で関西国際空港を拠点とするLCC「Peach」とコラボし藤色と白のツートンカラーに変更されたりと、期間限定のカラーリングが話題を集めました。

 来年2024年でラピートと50000系は登場30周年を迎えます。また以前のように我々を楽しませてくれる塗装やラッピングが登場するのか、期待したいところです。

■最後に、この試験車の登場からも来年で30年

 最後は、現在では廃車となってしまったとある試験車についてご紹介しましょう。

’95.10 中央本線 四方津 P:長谷川武利
(消えた車両写真館より)

 これはJR東日本が在来線における「21世紀の理想的な鉄道システムの実現」という目標を掲げ、究極の技術開発に挑戦するべく1994年に製造された試験車、E991系「TRY-Z」です。全体的にそれまでの在来線車両ではなかった独特な形を持っており、そのフォルムはまるで新幹線のよう。先頭形状は前後で異なり、1号車のクモヤE991-1側は運転台がキャノピー型、反対側となるクモヤE990-1はシンプルな流線型となっていました。また中間車となるサヤE991-1は、車体傾斜に同期するパンタグラフ姿勢制御装置を装備しました。

 編成は3両編成からなり、製造は1号車のクモヤE991-1が日本車輛、2号車のサヤE991-1が東急車輛(台車は住友金属)、3号車のクモヤE990-1(上写真の車両)が日立製作所製でした。なお3両とも制御指令とブレーキシステム(油圧ブレーキ+吸着式渦電流ブレーキ)のみが共通といった仕様で、それ以外の車体構造、主回路機器、運転台、空調システム、台車(構造、車体姿勢制御方式、アクティブサスペンション)は別々の方式を採用していて共通性はなく、それぞれのパターンを個別で試験していたのでしょう。1994年11年に落成し、その後何度かの改装を重ねながら、常磐線で高速走行試験、中央線で車体姿勢制御走行試験を行ない、1999年3月に車籍抹消、6月に解体されました。

 意欲的な試験車から、今に続く設計思想を持った名車まで、様々な車両が登場した30年前。30年というと鉄道車両では更新して継続運用されるのか、はたまた転属や新型の登場により置き換えられるのかの岐路に立つ頃とも言えます。それぞれの車両に根強いファンも多く、各車の今後の動向が注目されます。

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