text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は番外編として開業40周年を迎えた上越新幹線にスポットを当てます。過去から現在に至るまで、断続的に上越新幹線にまつわる製品が出ているプラレール。中には入手困難な激レア製品もあったりします。(編集部)
上越新幹線は大宮〜新潟間を結ぶJR東日本の新幹線です。その歴史は、国鉄時代の1982年11月15日に先に開業(6月)していた東北新幹線に続く東日本地域2本目の新幹線として開業しました。1982年に続けて開業した経緯により、他の路線が増えた2022年現在でも2路線をまとめて「東北・上越新幹線」と呼ばれる機会が多いように思えます。そのため、プラレールでもそのような名称で製品化されました。
今回は、今年で開業40周年を迎えた上越新幹線の歴史をプラレールで辿っていきます。
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■開業から2000年代頃まで
開業時の東北・上越新幹線用車両と言えば、みなさんご存知200系車両。登場当時は「緑の疾風(はやて)」の愛称が付けられていた200系新幹線ですが、その見た目は0系に似た団子鼻(ラウンドノーズ)。0系に似ているとは言え、正確には山陽新幹線開業前の試験で使われていた951形を元にしたロングノーズ。車体は全くの別物です。1964年の0系以来となる営業用の新型新幹線。当然プラレールでも発売される事になりますが、そのデフォルメの仕方が斜め上でした。
▲1981年4月発売の車両単品「ライト付東北上越新幹線」と1982年8月発売のセット品「東北上越新幹線デラックスセット」
そのデフォルメというのが、なんと車体は既存の「ライト付ひかり号」をそのまま使用し、シャーシにスノープラウを追加して塗装を変更した「だけ」というもの。しかしそこはやはりプラレール。この程度の差異で十分200系に見えるのが面白いところです。
製品は開業より一足早く、1981年4月に単品が発売されました。続いて、1982年にはベーシックセットとして「東北上越新幹線セット」が発売され、動力刷新を経て1992年頃まで継続してラインナップに乗る事になります。同年には東北・上越新幹線の沿線風景と路線の特徴を再現した「東北上越新幹線デラックスセット」が発売されるなど、後述のように新型車両への期待度が高いことを伺わせる商品展開がしばらく続く事になります。
●超の付くレア品!東海型急行電車塗り替えの「新幹線リレー号」
1982年の開業当時、東北・上越新幹線は暫定的に大宮を起点としていました。このため、将来的に延伸される上野〜大宮間の輸送を補完する役目を持つ「新幹線リレー号」が運行されていましたが、こちらもプラレールになっています。
▲165系がモデルの「東海型急行電車」を塗り替えて185系に見立てた「新幹線リレー号」。1982年に発売され、実車の引退と同時の1985年に絶版となり、現在では超が付くレア品。
このリレー号と東北・上越新幹線の乗り継ぎをイメージし、交互発着できる駅「複線自動ステーション」を入れたセット品「東北上越新幹線・リレー号セット」が1982年に発売されています。が、そもそもがレアものの「リレー号」が入っている上にセット自体も生産数が少ないようで、今ではレア度が上位に食い込むアイテムになっています。
「ライト付東北上越新幹線」は0系と並んでプラレール新幹線のスタンダード車両となりましたが、発売後の1983〜84年頃のプラレールは商品展開に少し迷いが見られます。この時期に中間車に電子オルゴールを搭載した「メロディー東北上越新幹線」と、ラジコン機能を搭載した「ラジオコントロール東北上越新幹線」が登場し、それぞれにセット品も発売されました。
これら「メロディー」と「ラジオコントロール」は結局長続きしなかったのですが、メーカーの最新の新幹線への力の入れようが分かり、プラレールの歴史に名を残す商品となりました。
このバリエーションの登場により、中間車の台車の金型がオルゴール搭載仕様のままとなっていたのがつい近年まで残っていました。プラレールファンの間ではこのような迷いのある商品展開が行われた時期を指して「冬の時代」と呼ぶこともあったりします。
東北・上越新幹線の開業から3年後の1985年、東海道・山陽新幹線に新型車両100系が登場します。鋭いシャークノーズという、0系・200系から一新された外観を持つ100系のインパクトは非常に大きく、プラレールでもその年のうちに「ニュー新幹線」という名称で発売され、セット品も次々と発売されるなど、その勢力を拡大させました。
この「ニュー新幹線」の登場により、「ライト付東北上越新幹線」は束の間のプラレール新幹線代表の座を降りる事になります。そして、前述の通り1992年頃に単品・セット品が絶版となってしまいます。
その少し前の1987年には、200系に100系と同様の前面形状を持つ新形態「シャークノーズ」が登場します。実車の登場から遅れること3年、1990年にシャークノーズもプラレールで発売されますが、これもまたプラレールらしいデフォルメで登場しました。
この製品は「ニュー新幹線」の先頭後尾と「ライト付東北上越新幹線」の中間車を組み合わせ、緑に塗り替えたというもの。1990年当時はまだ100系の金型で平屋中間車が存在しなかった事から、このような形態が生まれたのだと考えられます。ちなみにプラレールで100系平屋中間車が登場するのはこの製品の発売のずっと後、2012年のことです。
こちらは「ライト付」の方が絶版となった後の東北上越新幹線枠を担うことになり、2000年までラインナップに載り続けました。
JR化後の90年代は新幹線の新型車両ラッシュが続き、上越新幹線に所縁のある車両となると、新幹線通勤を主眼に開発された、オールダブルデッカー車のE1系・E4系。北陸新幹線用に開発され、大宮〜高崎間は上越新幹線を走行する事になるE2系が相次いでデビューし、これらも全てプラレール化されました。これによって今まで200系のみだった上越新幹線系のラインナップが急速に充実します。
1999年にはリニューアルが施された200系を製品化した「ニュー200系新幹線」が発売されましたが、あまり売れ行きが振るわなかったのか翌2000年に絶版となっています。
▲「ニュー200系新幹線」は実車を再現すると同時に、塗装技術の向上を示す製品にもなっている。
90年代以降の東日本の新幹線は複数の系列が複数の線区を走る状態となりました。プラレールの商品名も走行線区より系列名を前面に押し出すようになり、商品名から「上越新幹線」が消えてしまいます。
こうして上越新幹線の名前が影を潜めるようになりましたが、2005年にはイベント限定品として200系のシャークノーズが2階建て車を組み込んだ編成で発売され、2007年にはE1系の新塗装が発売されるなど、細々と上越新幹線関連の商品展開が断続的に続きます。E1系新塗装はセット品でも発売され、E4系は連結仕様となり実車さながらのE4系同士の連結運用が再現できるようになりました。
■開業40周年に至る近年の動向
再び上越新幹線関連で動きが出始めるのは、90年代にデビューした車両の老朽化が始まる2010年代になります。まず、1999年以降上越新幹線専属となっていたE1系が2012年に引退します。引退後もプラレールではしばらくラインナップに残っていましたが、2014年に絶版になりました。200系のラウンドノーズは、単品の絶版から遅れること約20年が経過した2013年に引退。ちなみにシャークノーズの引退はかなり早く、2005年に全車が現役を退いています。黄色い帯が特徴的だったE4系も東北新幹線から撤退し、上越新幹線用の車両となりました。その後順次E1系が纏っていたのと同様のピンク帯に塗り替えられましたが、この塗装変更は2015年にプラレールにも反映されています。
2013年にはメーカー直属の店舗であるプラレールショップの限定品として、シャークノーズタイプの「200系200番代新幹線 F編成」が発売されました。このF編成は前年に型が起こされた100系の平屋中間車を早速利用した製品で、ピンストライプの無い帯が特徴的なものです。
E4系は2021年に引退してしまいましたが、プラレールでは2022年現在もラインナップに載っています。E1系のようにしばらく残るかもしれませんが、引退済みの車両ということで今後の動向が気になる製品です。
実車の方ではしばらくE4系が上越新幹線の主力車両として頑張っていましたが、北陸新幹線用として2013年に登場したE7系が、上越新幹線にも投入される事が2017年に発表され、2018年から運用を開始しました。E7系は北陸新幹線延伸用として開発された車両ということもあり、プラレールでの商品展開を積極的に行なっています。もちろん上越新幹線への投入も見逃すわけにはいかず、次のような形態が発売されました。
E7系の投入によって2021年10月に引退したE4系の「さよなら仕様」と、ピンク帯が入った上越新幹線用のE7系「朱鷺色仕様」のセットが2021年11月に発売され、久々の上越新幹線モノとなる商品がプラレールに姿を現しました。このセットのE4系はさよなら仕様となり、通常品との差別化を図っています。
プラレール的視点では、2006年にセット品で連結仕様が登場し、2014年以降は単品が連結仕様に一本化されたE4系が7年ぶりに非連結仕様となったのが特筆されるセットです。そして意外な事に、開業39年目にして初となる「上越新幹線」のみをプッシュした車両単体商品になります。
▲E4系はさよなら仕様。E7系のピンク帯もきちんと塗装で表現されている。E7系の朱鷺色はシックな色合いの車体に明るい印象を与えてくれる特別仕様だった。
そして今年、2022年11月に上越新幹線は開業から40周年を迎えました。山形新幹線は30周年、東北新幹線も大宮〜盛岡間が40周年、盛岡〜八戸間が20周年を迎え、JR東日本では「新幹線イヤー2022」としてこの記念すべき年を祝っています。プラレールでは新幹線イヤーの記念商品としてE4系と400系の連結セットを発売しました。
▲2022年9月発売の「400系つばさ&E4系Max連結セット」。1999年に始まった連結運用だが、400系の塗装変更の関係で短期間しか見られなかった組み合わせとなっているのがマニアック。
このセットでは久しぶりにE4系の黄色帯が製品化されています。セットのモデルとなった運用は東北新幹線のものですが、往年の上越新幹線の姿が再びプラレールに登場しました。
東北・北陸新幹線と共通の車両が運用されていて、当初から専属の車両が投入されてきたわけではないのでいまいちパッとしない印象が否めない上越新幹線。プラレールにおいても時代に翻弄され、東北新幹線のついでのような扱いを受けてきました。
それでもこのように振り返ってみると、さすがは新潟と東京を結ぶ大動脈だと感じるような製品が数多く発売されていたことが分かります。最近の上越新幹線では、E2系J66編成が200系カラーに塗り替えられて走っているのが話題となっています。このJ66編成もいずれプラレール化されることでしょう。開業40周年を迎え、まだまだプラレールでの動向に目が離せない上越新幹線です。
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