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特集・コラム

その橋は街中に息を潜めるように… トラフガーダー橋があるジオラマを作りたい!

2022.08.30

text & modeling:瀧口宜慎(RMM)
photo(特記以外):浅水浩二

↓制作途中の写真やジオラマ全景写真はこちら!↓

  TOMIXから近年登場したトラフガーダー橋は、情景に変化を与えてくれる橋梁製品の中では最も小さなアイテムといえます。この可愛らしい橋は鋼材だけで組まれ、なんとも簡便なスッキリしたスタイルが魅力的です。ここではトラフガーダー橋が、どのような場所で使われているのか実例を観察し、Nゲージで作例を作っていきたいと思います。

■そもそも「トラフガーダー橋」ってなに?

 左右それぞれのレールを、並行する主桁であるI型鋼で挟む構造で、日本語に直すと「 槽状桁(そうじょうけた)」とも言います。デッキガーダー橋に比べ、レール・枕木・主桁を積み上げていくものではなく、レール、枕木、主桁が横方向に広がるため、高さが抑えられ桁下のクリアランスを高くとりたい場所には有効です。しかし、主桁をあまり太くできないことから強度が得られず、橋脚と橋脚の間は数メートルしか渡すことはできません。そのため長い橋梁や、背の高い橋梁には向かず、川幅の狭い橋や、桁下に道路や水路のようなものが通っている例が多いようです。

■百聞は一見に如かず 実際に見に行ってみた。

  実際にトラフガーダー橋が設置されている、伊豆箱根鉄道駿豆線の三島広小路駅に行ってみました。ここは三島の市街地ということもあり、周辺は中規模ビルや商店が立ち並ぶ中、軒先をかすめて電車が通り抜けていくという下町的な日常風景に線路が介在する風情ある場所です。駅の三島寄りにある水路は蓮沼川という川で、水路の隣に踏切、そしてホームがあり、情景要素が小さな空間にギュッと詰まった場所でもあります。1日に何往復かはE257系による特急「踊り子」も通過し、大幹線をさっそうと走る姿とはまた違った魅力が感じられる場所です。

■実景からジオラマに落とし込む

  主役のトラフガーダー橋はTOMIXから発売されており、長さは35mmと70mmの2種あります。三島広小路の実景から考えると35mmのトラフガーダー橋の方がピッタリかもしれませんが、情景の主役と考え、少し長い70㎜のものを使用しました。ベースはP4写真用パネル(333×220mm)を使用。t5.0の黒色スチレンボードを2枚重ねて貼り、水路のために10mmの地面の高さを稼いでおきます。

 水表現は水草のある川底感を出したかったので、タミヤのエナメル塗料クリアグリーンに同じエナメルのブルーを少々混ぜ、あえて川底に均質にはならぬように塗り、これが乾いたらをターナーのグレインペイントアクアシリーズブルーディープを厚めに塗りました。梅雨時の水量の多い感じをイメージしましたが川底の緑味が強く出過ぎてしまいました。水面の表現技術は一朝一夕には得られない難しいものです。

 そのほか市街地を再現するため所狭しと組み込んだストラクチャーは、基本的にトミーテックのジオコレシリーズを使用しています。ただ、製品のものから雰囲気を変えるため、屋根色や壁色を一部変えたり、看板を差し替えたりしています。建物を斜めにカットしたり、他のストラクチャーと組み合わせるなどして、デッドスペースの空き地をなくして密度感のある市街地の雰囲気が出るよう工夫しています。

 三島広小路をイメージした駅のホームもジオコレの駅の中で近代的な雰囲気の「駅G3」を使いました。この駅での改札口に位置する建屋部分は実際の三島広小路駅ではトイレと資材倉庫で、駅本屋は修善寺寄りに位置します。模型でもそれをに倣いこの部分はホームと待合所とし、駅出入口は壁で埋めています。

  川幅を広くとったことや、周辺のストラクチャーも基本的には製品を活かす方向で組んだため、三島広小路の実風景をそのまま模型にというわけにはいきませんでしたが、小さな駅と、惣菜の匂いが漂う商店街、そんな日常感のあふれる風景の中を流れる水路と、それを渡るトラフガーダー橋が表現できたかと思います。

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