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特集・コラム

「駅」を訪ねて…その歴史は侮れない…!? 「ひたちなか海浜鉄道 平磯駅」

2022.08.28

取材日:’21.11.2
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル 取材協力:ひたちなか海浜鉄道

 隔月刊行時代のレイル・マガジンで連載した「シーナリー散歩」。WEB編は「『駅』を訪ねて…」に再構成してお届けしています。2022年1月号では、茨城県の第三セクター鉄道・ひたちなか海浜鉄道を取り上げました。今回のWEB編では、誌面では紙幅の関係で取り上げなかった「平磯(ひらいそ)駅」をご紹介します。

前回記事(殿山駅)はコチラ

レイル・マガジン2022年1月号(452号)書誌情報

今の駅舎は世を忍ぶ仮の姿…? 住宅地の中の小駅
 平磯駅は、前回の殿山駅のひとつ下り方で、前々回の美乃浜学園駅のひとつ手前になります。今の駅は、住宅地の中のちょっと奥まった位置にあり、うっかりすると見過ごしてしまいそうな小ぶりなものなのですが…。

▲線路と並行している道路から、駅入り口を見たところ。手前に駐輪場があり、左手は住宅となっています。

▲切符の自動販売機を備えた、最小規模の駅舎。差し掛けられた透明樹脂材の屋根は、市販のカーポート用のようにも見えます。

▲ホーム側から見た駅舎。手前側にWCも設置されています。

 今でこそ目立たぬ小駅ですが、1924年の開業時にはかなり立派な木造駅舎を備え、島式ホームのある交換設備、さらに貨物側線まで備えていたそうです。1987年に駅舎を全面的に建て替え、鉄道会社(当時は茨城交通)直営のスーパーマーケットと駅舎が複合した、同線内では随一の近代的な駅舎となりました。この時に交換設備は撤去され、棒線ホームの駅となっています。スーパーが併設されるくらいですから、当駅が路線中ではかなり重要度が高く、周辺の人口密度も濃かったことが窺えます。

▲ホームから、阿字ヶ浦方向を見たところ。周囲は住宅地としてかなり建て込んでいることが分かります。かつて島式ホームだった頃は、分岐器があって写真右手にもう1本の線路が延びてきていたはずです。

 しかし直営のスーパーの経営はその後行き詰まり、経営を他社に移管するもそれも閉店の憂き目に…。そこで駅舎を再度建て替えることとなり、スーパーだった部分の敷地は宅地として分譲されました。それが今の姿で、完成したのは2011年10月のことでした。

▲駅ホームから勝田方向を見たところ。ホーム壁の向こう側の住宅は、かつてスーパーが建っていた場所。ホーム柵は2021年の美乃浜学園駅新設に伴う安全向上策として設置されました。

▲写真奥側が元々のホーム屋根で、手前側が美乃浜学園駅新設に合わせた整備事業で新設された屋根のようです。

▲例の独特な書体の駅名版は、平磯海水浴場のシンボルである「クジラの大ちゃん」が描かれた「平」の字と、平磯海岸が渡り鳥の通り道となっていることから磯に溜まる渡り鳥が描かれた「磯」の字からなっています(画像はひたちなか海浜鉄道WEBサイトより)。

路線中、ほぼ唯一海が見えるポイント「沢メキ踏切」
 ひたちなか海浜鉄道は那珂湊~阿字ヶ浦間で海岸線にほぼ並行して走っていますし、かつては海水浴客輸送でも賑わったのですが、車窓から海が見えるところがほとんどない…という意外なところもあります。線路は台地の上を走り、海岸線との間に高低差がある上、林や住宅など視界を遮るものも多いのです。

 そんな路線中でほぼ唯一海が見えるポイントが、殿山~平磯間にある通称「沢メキ踏切」。実際このあたりが線路と海岸との距離が最も近くなります(200m弱)。ちなみに「沢メキ」というのはこのあたりの地名です。

▲太平洋をバックに悠然と踏切を横切る勝田行きの列車。直行する道路は海からずっと坂道でこの先(撮影地背後)まで登っていきます。

▲【オマケ】平磯駅前の道路でちょっと遊んでくれた茶トラのネコちゃん。

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