text & photo:RM
取材日:2022年1月16日 場所:長津田検車区
取材協力:東急電鉄
東急電鉄田園都市線で長く主力車両を務めた8500系。機能優先を突き詰めた様な四角四面のスタイルは「機能美」の域にまで至り、ハイセンスな沿線のイメージ作りに大いに貢献してきた。しかしその活躍もいよいよ本当にラストスパート。かつて400両以上が活躍した同系もついに残り3編成30両となっており、しかも明日にでも1本ずつ姿を消してもおかしくはない…という状況だ。
一番奥に、横浜高速鉄道Y001系(こどもの国線用、東急で言うと目黒線用3000系と同系統の前面)までが顔を揃え、東急電鉄の「顔」のデザインの変化の歴史が伝わってきた。
本日は、同社長津田検車区において、その3編成を後継車両などとも並べたメディア向けの撮影会が行われた。並べられた8500系は、8630F、8631F、8637Fの3編成、それに2020系2148F、5000系5110F、さらにこどもの国線用のY001Fまでが顔を揃えたことになる。
主役である8500系はこの3編成。これがいよいよラストとなる3編成だ。
この3編成の8500系、実はそれぞれ増備時期は異なり、形態的に差異が見られるのもファン的には見どころだろう。
●8630F
両先頭車を含む5両が1979年製の現状最古参車両。すなわち非「軽量車」である。他の2編成よりも屋根頂部のRがきつく、側面に向けて緩やかに落ちてくる。
車内は更新を受けており、袖仕切りは板状でロングシート中ほどにスタンションポールが立てられている。また座面はバケットタイプになっている。車内にはクーラー吹き出し口と共に扇風機が設置されている。
●8631F
前述8630Fとは車番は一つしか違わないが、製造時期は4年ほど開いた1983年。当初から10両同時に軽量車として誕生した編成だ。軽量車の特徴として、屋根頂部のRが緩やかで、その代わりに両肩部でキュッと丸め込んでいる形となる。
車内は、袖仕切りがパイプ状でスタンションポールはない。座面は3+4ごとにモケットの色を違えている。この車両もクーラーと扇風機が併設されている。
●8637F
唯一「青帯」を纏う編成。1986年に10両全車が軽量車として登場し、後に中間車3両を同じく軽量車の8642Fと入れ替えている(従って外観上は変わらず軽量車で統一)。特徴である「青帯」は年季が入ったもので、登場翌年の1987年から纏い始め、様々な広告塗装を経ても帯色は今まで一貫して青色のままとのこと。
車内は、同時期製造の9000系のデザインが適用されており、板状の袖仕切り、3+4部分での中仕切りが特徴。さらに天井ではついに扇風機が廃止され、スイープファンが設置されている。
●運転台
ワンハンドルマスコンは登場時は「未来の電車」というイメージであったが、今このように年季の入った姿を見ると、立派に機械としての機能を長年にわたって果たしてきた…という感慨を受ける。モニター装置などはなく、運転士の技量・経験が今よりも必要とされていた時代の運転台と言えるだろう。
8500系は2022年度に引退と発表されているが、現在2021年度の終盤に来て既に残り3編成となると、少なくとも来年度末まで活躍を続けるとはちょっと考えにくいのではないだろうか。東急電鉄からの正式発表が待たれるが、ファンの方は日々悔いのないように乗車や撮影などの記録に努めていただければと思う。