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特集・コラム

8月の鉄道のデキゴト「2代目余部橋梁供用開始(2010年)」

2021.08.24

text:RM

■孤高のトレッスル橋、山陰本線余部橋梁が新橋梁に移行

 「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! ティーブレイクにでも気軽にお楽しみください!

▲赤いDL、赤いヘッドマーク、そして赤い鉄橋…。心を震わせる名シーンがここにあった。
‘03.5.3 山陰本線 鎧~餘部 P:谷口武揚(今日の一枚Memoriesより)

 2回目となる今回は、11年前となる2010年8月のデキゴトから振り返ってみましょう。ブルートレイン「出雲」の撮影名所としても知られた山陰本線・余部橋梁(鎧~餘部間)が、それまでの鋼製トレッスル橋から2代目のエクストラドーズドPC橋へと切り替わったのがこの月のことでした。

▲整然と並ぶ鋼製の橋脚が美しかった。
‘05.12.4 山陰本線 鎧~餘部 P:稲田耕三(今日の一枚Memoriesより)

 初代の赤いトレッスル橋は1912(明治45)年に開通。高さおよそ40mで餘部の集落を一跨ぎするダイナミックなスタイルで知られました。しかし立地があまりにも海岸線に近く、この橋の生涯は常に錆との戦いであったと言われています。初期においては現地に常駐して日々補修作業を行う「繕いケレン」という役割の方がおり、そうした方の地道な努力により、本来なら20年で寿命が来てもおかしくない鋼製橋を実に98年間にわたって安全に維持することが出来たのです。

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旧餘部橋梁は、なぜ錆び落ちなかったのか…?

▲防風板が設置され、路盤の幅も拡大されたコンクリート製の2代目橋。冬季でも安心感がある。
‘21.1.8 山陰本線 鎧~餘部 P:和田温司(今日の一枚より)

 コンクリート製の2代目橋は2007年に着工され、2010年に完工。初代橋での営業運転は2010年7月16日に終了し、区間運休しての切替工事を経て、8月12日から2代目橋の供用が開始されました。この橋は防風板の設置によって安全度が向上、また路盤にバラストが散布されていることから通過時の騒音も軽減されています。

▲2代目橋の鎧方は、トンネル出口からS字を描いて線路がつながっている。かつて初代橋がこの左手に位置していたため。
‘20.9.25 山陰本線 鎧~餘部 P:亀村昌彦(今日の一枚より)

▲初代橋の橋脚を活用した展望施設へは、ガラス張りのエレベーターが設置されている。
‘18.11.4 兵庫県香美町 P:田井 直(今日の一枚より)

 また、旧余部橋梁の餘部駅側の3本の橋脚は保存されており、2013年5月により「余部鉄橋『空の駅』展望施設」として公開されています。現地保存された橋脚のレールや枕木の上を歩くことができ、橋梁下には主桁モニュメントが設置されています。さらに2017年11月には、この展望施設へのアクセスとしてエレベーター「余部クリスタルタワー」も設置されました。新しい観光資源として今も存在感を放つ初代余部橋梁というわけです。

 

 

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