取材日:‘20.12.20
text & photo(特記以外):廣瀬 匠(RM)
取材協力:京阪電気鉄道
2020年12月21日、京阪電鉄中之島線中之島駅構内にて「京阪5000系誕生50周年記念イベント」が催された。イベントでは5000系の大きな特徴となっている3扉から5扉へ変換する際の座席の昇降実演など、同系を体感できるプログラムが盛り込まれていた。
▲中之島駅3番線に停車中の京阪5000系第5編成。「50周年記念ヘッドマーク」が掲げられている。
■京阪5000系とは…
ひっ迫するラッシュ時の混雑の中で、乗降時間短縮を目的として1970年に登場した車両。7両編成7本が登場したが、現在は4編成が運用に入っている。
この車両の大きな特徴として、5扉のうち2扉を「ラッシュ用ドア」とし、朝ラッシュ時に全扉を使用、昼間の閑散時には「ラッシュ用ドア」を締め切ってその前に座席を下し、3扉車として運用するというのが挙げられる。関東エリアで多扉車が投入されるよりも10数年も早く実用化されており、京阪の名物的な存在と言っても過言ではないだろう。
しかし、この5扉車としての運用は現在、平日朝ラッシュ時のみとなっており、2021年1月31日のダイヤ変更に先立って1月29日に終了する予定となっている。
▲5扉すべてが開扉された状態。
■座席が上がる! 3扉から5扉へ
1970年、京阪電鉄の朝ラッシュ時混雑がひっ迫しており、停車時間の長さに起因する慢性的な遅延が問題となっていた。その問題を解決するために導入されたのが、座席を昇降させ扉数を変化させるという技術であった。後年の、関東エリアの多扉車では終日全扉を使用する方式であり、この扉数を変化させるという方式は今なお本系列のみの採用である。今回のイベントでは、その座席の昇降実演が数回にわたって催された。
- 扉を締め切り、座席を下して着座できる状態。
- 座席上昇開始! 座面の角度がやや持ち上げられている。
- 座席は上へ…。
- 天井のカーブに沿う形で収納される。
- 5扉として全扉開扉された状態の車内。ラッシュにはかなりの効果があり、乗降時間を短くできるため乗務員から好評だったという。
- 通常時(=3扉時)も使用するドアは、車体色で全面塗装されている。
- 5扉使用時にのみ開扉する「ラッシュ用ドア」は扉上半分を無塗装として識別している。また、陽光対策で青みがかった熱吸収のブロンズガラスが採用されている。
- 5扉配置のため、ほかの3扉車とドア位置が異なっている。
今は車庫内等でしか行われていない京阪5000系の座席の昇降です!
— Rail Magazine(レイル・マガジン)【公式】 (@RM_nekopub) December 20, 2020
3ドアから5ドアにドア数が変わります! pic.twitter.com/TmCHGSHgiY
■イベントでは普段使用されない中之島駅3番線に入線
イベントでは、臨時列車の発着のみに使用される3番線にて行われた。当日は車内見学のみ事前の申し込みが必要となっていたが、車外からの見学は自由におこなうことが出来た。
- 事前申し込みをした参加者は車内で座席の昇降を見学することが出来た。
- 会場ではブースでグッズ販売も行われた。
- イベント後に運転された臨時区間急行 萱島行。通常休日には運転されない5扉状態として運転された。
■気になる去就は…?
京阪電鉄では前述の通り2021年1月31日にダイヤ変更を実施。これに先立って5000系の5扉運用は終了し、それ以降は3扉運用のみとなる予定だ。ただし、5000系は3扉状態としてもドア位置が他系列と異なることから、ホームドアの設置工事に伴って順次廃車になるとのこと。レイル・ファンのみならず沿線住民にも親しまれた本系列が引退することは寂しい限りだが、残りわずかとなった5000系の活躍を見守りたい。
▲イベント後、萱島(かやしま)まで運転された臨時区間急行。
京阪電気鉄道 本線 土居 P:ふくしま・さぎす