製作・写真:根本貫史
高度な作業を求められがちな模型工作。日本で広く親しまれているNゲージであると、その小ささからより一層技術を要することが多い。初心者にとっては高いハードルともなり、そのような技術はすぐに身に付くものではないのも確かである。そこで今回はあまり力を入れずに気軽にひと手間加えてディテールアップをし、まずは工作そのものに親しんでもらうことを目的に車両工作をした作例を紹介しよう。
■「エクスプレス185」色の185系
「エクスプレス185」色とは、1995年から185系200番代を対象に行われたリニューアル工事により誕生した塗装で、側面には赤とグレーと黄色のブロックパターンのアクセントが入り、さらには「EXPRESS 185」のレタリングがあしらわれる。このリニューアル工事で内装の他、それまで緑帯だった車両のイメージも一新した。だがこの塗装はその後、2014年頃から斜めストライプの国鉄色に順次改められ、2017年に消滅している。
■モデルについて
この作例ではマイクロエースの185系200番代の改良品(A-4131)を使用。元々は実車登場直後に発売された40年近く前の製品だが、この改良品は下廻りを中心に現行水準に改良されたものだ。改良品では全車に室内灯取り付けが可能になり、新調された床板によりマイクロカプラー及びTNカプラーの取り付けが可能となった。
■スミ入れを中心に「ちょい足し」
今回は「ちょい足し」ということで高度なテクニックは避け、スミ入れとパンタとカプラーの交換程度に留めておく。とはいえ、これだけのタッチアップでも見違えるように様変わりするので、興味を持った読者の皆様には是非チャレンジしてみてほしい。 以下、ギャラリー画像にて加工の詳細をまとめたので、解説などはそちらを参照していただきたい。
- 交換前のパンタグラフ。さらに形状をリアルにするためこれを換装する。
- 交換したのはTOMIXのPS16J(0269)。台座のピッチがわずかに異なるので、片側の取り付けピンを削り、パンタ台座に差し込んでゴム系接着剤で固定。本体はライトグレーで塗装。
- 改良品の床板はTNカプラー対応となっているので交換。トイレタンク(PZ-106床下部品)を設置する側は、カプラー取付台座手前をカットする必要がある。
- カプラーは密連形TNカプラー(0339)に交換した。
- 側窓断面の肉厚が目立つので、ペン先が筆状のガンダムマーカー(リアルタッチマーカーGM406)を塗り目立たなくさせる。
- 客扉周囲にタミヤのスミ入れ塗料(ブラック)を流し込む。
- 乾燥後に溶剤を染み込ませた綿棒で軽く拭き取る。ディテールを強調できるのはもちろん、経年の汚れも再現できる。
- 屋上のクーラーは屋根と一体成型で、ディテールも現在の製品と比べて甘いので、スミ入れでディテールを強調。
- スミ入れの面積が大きい場合は溶剤を染み込ませたティッシュで拭き取るとよい。
- 完成した185系エクスプレス色。スミ入れがメインのお手軽加工だが、それだけでも十分に「実車感」は出せている。
- こちらはタッチアップ前のスッピン状態。
- こちら各部へスミ入れ、タッチアップ後の姿。大規模なことはしていないが、この程度でもかなり実感的になっているのがわかる。作例ではさらに床下機器と台車をスミ入れ塗料(ブラウン)でウォッシングし、室内灯の取り付けと同時に銀河モデルの窓用カーテンステッカー(N-562)を取り付けた。
- 俯瞰のアングルから。こちらは加工前。
- こちらが加工後。扉廻りやクーラーの彫りが深くなり車体にメリハリがついてリアルさが増している。
- TN化で連結間隔が狭まり、トイレタンクも取り付けたのでより実感的になった。
- 実車の185系による「あかぎ」は2014年3月14日をもって終了した。さらに同系で運行していた「ホームライナー鴻巣」も廃止された。
- スミ入れは旧来よりエナメル塗料と溶剤を使うのが一般的。最近ではスミ入れに適した濃度に調整した専用の「スミ入れ塗料」も登場しているので今回はそれらを使用した。このほか面相筆や平筆、拭き取り用の綿棒とティッシュも用意する。
- 後輩651系1000番代と離合する185系。完成品にちょっと手を加えるだけでより実車らしい重厚な雰囲気を演出できる。パーツによるディテールアップも重要だが、重要なのはスミ入れやタッチアップなどでプラ特有の質感を消すことだ。
- 本誌230号で同時にタッチアップをした651系1000番代と共に。どちらも模型とは思えない重厚感ある仕上がりにお手軽にすることができている。興味を持った方は是非チャレンジしてみてほしい。