text & photo:ふくしま・さぎす
取材日:’20.12.9
2021年春のダイヤ改正でデビューがアナウンスされた特急「湘南」、そしてそれと引き換えに廃止が発表された通勤ライナー列車「湘南ライナー」。このライナーは、朝の通勤時間帯と夕方の帰宅時間帯に運転される座席定員制の列車となっている。
▲21:00前、東京駅9番線に入線した「湘南ライナー11号」。
■湘南と都心の家路を支えてきた「ライナー」
「湘南ライナー」は、1988年に運転を開始した定員制の列車である。上り列車が朝の出勤時間帯、下り列車が夕方から夜の帰宅時間帯に運転されており、乗車整理券「湘南ライナー券」は各ライナー停車駅のみどりの窓口、もしくは構内・ホーム上の「湘南ライナー券うりば」で販売されている。
■定員制ならではのルール
今回乗車したのは、東京駅21:00発の小田原行「湘南ライナー11号」。本日、これに充当されたのは、大宮総合車両センター所属185系0番代A7編成(10両編成)だった。ちなみに、一つ前の「湘南ライナー9号」はオール2階建ての215系が充当された。乗車機会があれば、こちらと乗り比べするのも楽しいかもしれない。
普通車に乗車の際に必須となるのが「湘南ライナー券」だ。窓口販売もされているが、先述の通りホーム上でも販売されており、価格は一律520円だ。ここで注意したいのは定員制の列車のため、売り切れ次第販売が終了となること、しかも、売り切れ前であっても発車の5分前には販売を打ち切るため、乗車の際は余裕をもって駅に着いておくといいだろう。もちろん、事前販売制のため車内での販売も行っていないので、こちらも注意したい。
なお、グリーン車(編成中2両連結)に乗車の場合はライナー券は必要なく、通常のグリーン券での乗車となる(ただし、座席の保証はない)。
▲東京駅9・10番ホームに設けられた湘南ライナー券うりば。
■そして東京発車…
21:00、せわしなく人が行きかうホームと対照的に、車内にはゆったりとした空気が流れていた。発車ベルが鳴りやみ、足元からモーターの唸りが聞こえると、列車はゆっくりと発車した。
発車するとすぐ、缶の開く音があちこちで聞こえてきた。それと共にかすかなため息も聞こえ、この列車が帰路の安らぎの場であることを改めて実感させられた。
列車は、有楽町、新橋界隈のビル群を横目にゆったりと走り、途中「サンライズ瀬戸・出雲」の構内入換と並走しながら品川駅に到着した。
ライナー券を購入して乗車するのは東京と品川の2駅のみで、ここでも帰路につく人々を乗せて、混み合う品川駅を発車した。
▲蛍光灯の光が包む185系の車内。
■人で溢れる主要駅を通過!
品川を発車すると、モーター音はどんどん大きくなっていった。途中、京浜東北線の列車を何本も追い越しながら川崎、横浜を高速で通過。普通列車なら、ここで乗客が大きく入れ替わるところだが、本列車は通過するため乗客が入れ替わることもなく、列車は一路大船駅へと夜の横浜市内を駆けていった。
▲横浜駅を高速で通過。車窓を注視していないと見落としそうだった。
■「湘南ライナー」のもう一つの顔
21:37大船着。ここからは「ライナー」ではなく、「快速」扱いとなるため追加料金なしで乗車が可能となる。そのためここから乗車する人も多く、中には短距離利用なのかデッキに立つ人も見られるくらいには車内がにぎやかになっていった。ここから藤沢、辻堂、茅ケ崎と停車していくが、各駅入れ替わりで同じくらいの人が乗車してくるため、区間利用客が多いという意外な一面も垣間見ることが出来た。
平塚でようやくまとまった数の乗客が降り、車内は再び静寂に包まれた。
▲茅ケ崎で接続を取る相模線の205系。
列車は、国府津を出ると終点小田原に22:12に到着。残ったわずかな客を降ろして幕は「回送」となった。
都心からの帰路を辿る乗客にひとときの安らぎを与えつつ、大船からは区間利用も担うという、二つの顔を持つ列車「湘南ライナー」。残された時間はそう長くはないが、機会があればぜひ乗ってみてはいかがだろうか?
ただ、乗車列車によっては東京方面への最終列車に折り返し乗車できない場合もあるため注意したい。
▲小田原駅に到着した185系「湘南ライナー11号」。