text&photo:羽山 健(RM)
取材日:’15.7.24
取材協力:名鉄資料館
名鉄資料館は、名古屋鉄道の歴史を物語る数々の資料の保存・展示施設として、創業100周年である1994年6月に開館。しかし先日、本年12月25日(金)をもって閉館となることが発表されました。ここではレイル・マガジン386(2015年11月)号掲載の訪問記を再構成の上で再録します。
▲立体物資料が中心の第2展示室。歴史的な車輌の部品類はもちろん、駅施設の部品、CTCの機械、古レールなど、鉄道に関するありとあらゆる立体資料が収蔵されている。
鉄道という産業は、必然的に地域に根ざすことから他の産業と比べてもかなり色濃く歴史の積み重ねの上に成り立っています。このため鉄道会社自らが運営する博物館・資料館はとても意義深く、我々レイル・ファンには多くのことを示唆してくれるものです。
中京地区の雄である名古屋鉄道にも、その名も「名鉄資料館」という施設があり一般公開されているのをご存じでしょうか? 意外と知られていないこの施設を訪問してきましたので、ここにご紹介しましょう。
▲施設外観。資料館は1階部分だけで、2階や右手の建物は教習所となっている。
最寄り駅は名鉄広見線・日本ライン今渡駅。ここから徒歩で25分、タクシー利用の方が無難かもしれません(乗車時間5分ほど)。なぜそういう立地なのかは行ってみて一目瞭然。ここは職員の方が研修を行なう教習所の施設がメインだったのです。敷地裏手には水量豊かな木曽川が流れる閑静な立地。立派な研修室・合宿施設を横目に進むと、敷地奥に目指す資料館がありました。
▲紙による資料・史料が中心の第1展示室。奥側には時代ごとの制服を展示したコーナーも。
名鉄資料館の開館は1994(平成6)年、名古屋鉄道創業100周年を記念したもので、地域の多くの鉄道会社を統合していった複雑な生い立ちを、節目の年にしっかり後世に伝えることを目的として発足しました。
資料館単体で見ると決して広大な立地ではなく、実車の保存車などはないのですが、その代わりにパネル類での展示、およびさまざまな実物部品・用品の展示が充実しています。年表に掲げられたテーマは「地域社会の発展と共に歩んだ名鉄」。地域を愛し、地域から愛された鉄道会社としてのプライドを強く感じました。
▲第2展示室奥側に美しい状態で展示されている軌道自転車、C形パンタグラフ、D-16形台車。
決してアミューズメントパーク的なお楽しみ要素が豊富というわけではありませんが、とても居心地が良く、新たな発見があるかもしれません。
▲屋外には実物の台車(FS335A、FS307A、D-16)も展示中。
大変残念なことに、年内の営業日はすべて既に予約が満了してしまっているそうです。せめて本記事で収蔵品を見ていただければと思います。なお、収蔵資料は名鉄の資料倉庫にて保管されるとのことで、有効に活用されることを願っています。
- 駅からは少々遠いが、それだけにワクワク感が止まらないエントランス。
- 知る人ぞ知る存在であったのは本当に惜しまれる。
- 紙の史料・資料展示が中心の第1展示室。
- 7000系パノラマカーの運転台を使用したシミュレーター。
- 立体物資料を中心に展示する第2展示室。
- 台車やパンタグラフの実物部品展示。
- モノレール式のネコ車、かなり珍品では?
- 創業期に使用された古レール。
- 計画で終わった「パノラマドリームカー」の大型模型。
- 特別展示室では時期ごとにテーマを決めた展示が行われた。
- 16番鉄道模型による大レイアウト。
- 屋外に展示された実物台車。
- 7000系パノラマカーが、初期に装備していた「フェニックスマーク」。
- 実際に座ることもできる特急車用のシート。
- 特急のサボや大型模型類。
- 名鉄独特の切り抜き文字の車番やパノラマDXのヘッドマーク。
- 駅で使用されていた電話機類。
- 小牧線で使用されていたCTC装置。
- 直接制御車の主幹制御器。
- 歴代の職員制服。
- 思いのほか巨大な建物だが、その主用途は職員の研修施設。