text&photo:RM
取材日:‘20.10.2
取材協力:京都鉄道博物館
■近郊型電車の最高峰!117系電車の車内を再現
1980年、国鉄は関西私鉄に対抗するため、異例ともいえる専用車両117系の導入に踏み切った。車体色は、戦前の52系「関西急電」を思わせるクリーム色をベースにブラウンのラインが入ったカラーリンングとなっているほか、前面の形状もそれを彷彿とさせる斬新なものとなっていた。
▲当時としては画期的だった117系の車内設備の再現展示。展示を担当した学芸員の岡本氏一押しの展示となっている。
それだけではなく当時、その画期的な車内設備が大きな話題を呼んだ。追加料金なしで乗れる車両としては珍しかった転換クロスシートに、清潔感のあるシートカバー、車端部の化粧板など私鉄を意識したインテリアが好評を博した。
「私鉄王国」関西で私鉄各社に対抗するために投入された「京阪神特化型」の117系は、その後中京地区にも投入され「近郊型電車の完成形」となった。JR西日本では221系デビュー後も1995年の223系のデビューまで新快速として走り続け、現在も山陽本線の快速運用についている。
▲117系登場時に発売された記念入場券と車両展示会の案内券
愛称も153系時代の「ブルーライナー」から「シティライナー」に変更となった。
さらに、11月7日~10日には初の新快速専用車両となった117系のトップナンバーが京都鉄道博物館1階車両工場コーナーに展示される予定だ。
■国鉄からJRへ!近郊型電車のパイオニア「221系」登場
国鉄末期の1986年、新快速は複々線の外側線(いわゆる列車線)を走行するようになり、快速・普通を駅間で追い越すことが可能となった。ラッシュ時の増発なども行われると、次第に117系の長所であるはずの2ドアクロスシートが混雑と遅延の要因となっていた。
分割民営化後、JR西日本は初の新製車両を「明るく、静かで、快適な居住性を持つ新形通勤用近郊形電車」と銘打って221系を投入した。3ドアオールクロスシートというJR西日本の近郊型電車の標準スタイルとも呼べるこの座席配置もこの車両によって作られたといえる。
▲1階に展示されている221系電車の先頭部のモックアップ。1993(平成5)年、鷹取工場で作られたものとなっている。
さらに、1990年には2両からでも運用可能な技術面も評価されローレル賞を受賞した。新快速からは運用を退いたものの、今日も東海道本線の快速や、各線の快速などとして運用されている。
▲221系がローレル賞を受賞した際の中吊り広告。
■私鉄に対抗!アーバンネットワークの拡充
JR化後、「私鉄王国」と呼ばれる関西で「選ばれる鉄道」であるため、JRはアーバンネットワークの愛称を用いるとともに各線のダイヤを改善していった。その際に、ダイヤ設定の基準となった列車が新快速だった。
これにより、新快速は東海道本線のダイヤの基準だけでなくJR西日本の関西地区におけるフラッグシップ的な存在へと、さらなる進化を遂げていったのである。
▲JR化後、JR西日本は東海道本線を大阪起点に京都線・神戸線と愛称をつけるなど、イメージアップを図った。
そして現在、新快速は「Aシート」を導入しさらなる車内サービスの充実を図っている。「私鉄王国」と呼ばれる関西において、ライバルである私鉄とともに50年にわたって走り続けてきた新快速の歴史をぜひ体感してみてはいかがだろうか?
▲新快速50年ヘッドマークシールを掲げて走る223系「Aシート」編成。
’20.10.2 東海道本線 山崎~島本
🔶特集展示だけじゃない! ~京都鉄道博物館新快速50年企画レポートVol.3~