text:鉄道ホビダス編集部

‘25.6.7 鎌倉車両センター P:東條ともてつ
長らく横須賀・総武快速線の主力車両として活躍していたE217系。その独特の前面デザインや、後のE235系などに至るまでの拡幅車体の礎になったことなど、エポックメイキングな要素も多かった車両でした。そのデビューから晩年の活躍までを振り返ります。
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■横須賀・総武快速線に現れた銀色の電車
1994年、113系の置き換えを目的に登場したE217系。「近郊型」としてデビューした車両では初となる4扉車体を採用したほか、113系ではセミクロスシートだった車内が、E217系ではロングシートの車両が大半を占めるように。さらに拡幅車体を採用するなど、徹底して混雑緩和に重点が置かれた車体構造になりました。のちにこの「4扉の拡幅車体」というスタイルはJR東日本の基本となり、通勤型と近郊型という車両区分を統合するような形でのちのE231系やE233系では「一般型」と称するようになりました。
グリーン車は二階建てのサロE217・E216の2両が11両基本編成に組み込まれました。この二階建てグリーン車の設計も以降登場する車両に大きな影響を与え、「カシオペア」で活躍したE26系客車も実はこのE217系の設計をベースとしていたほか、JR四国5000系「マリンライナー」の二階建て車両もE217系をベースとしていました。
また、運転台廻りは衝突時のエネルギーを吸収する設計「クラッシャブル構造」を採用したのも大きなポイントでした。この構造もJR東日本でのちに登場する様々な車両で採用され続けることになります。
■同じようで少しずつ違う 8次にわたった量産
ほとんど見た目に差がないように思われるE217系ですが、1994年から1999年の間、8次にわたって製造され続けていたため、細かい点で違いがあります。例えば量産先行車として製造された1次車は前面のステップが分割されていたことなどが挙げられます。そのうち川崎重工製の1次車は車体を量産車同等のものに載せ替えられていますが、東急車輛製の1次車については最後まで分割ステップのスタイルを維持していました。
また、これも一目見ただけではわかりにくい違いですが、7次車からは非貫通構造となります。一見すると貫通扉があるようなデザインですが、よく見るとドアのハンドルや、ステップにはドアレールがなかったりします。
このような、よく見て初めて気がつく違いが多いというのも、ファンを惹きつける魅力の一つでしょう。
■転属・機器更新・スカート交換でバリエーションも豊かに

一時期東海道線でも活躍し、湘南色帯になっていたE217系。同車にとって初となるカラーバリエーションとなった。
‘10.3.20 東海道本線 茅ケ崎―平塚 P:岡崎克俊
(鉄道投稿情報局より)
登場当初から一貫して総武快速・横須賀線で運用され続けたE217系でしたが、一部編成が2006年に東海道線へ転属します。この際帯色をE231系と同様の湘南色帯に変更され、これがE217系史上初となるカラーバリエーションとなりました。
2008年頃からは登場から10年以上が経過したことから、機器更新が開始。この時横須賀・総武快速線用のE217系は、帯色とロゴマークも変更され、さらに外観デザイン上のバリエーションが増えることになりました。
また2009年頃になるとスカートの交換も実施。これは機器更新車のみならず、未更新車も交換対象に含まれており、東海道線へE217系が転属した2006年頃から、機器更新が完了した2012年頃までの間は同車にとって過渡期にあたり、非常に豊かなバリエーションを楽しむことができました。なお東海道線でのE217系の運用は上野東京ライン開業を控えた2015年3月に終了しています。
さらに細かい変更点では、列車番号表示器がマグサイン式からLED式に交換されたほか、側面表示器が字幕式であった車両についても順次LED式に交換されました。
■後継・E235系1000番代登場 そして引退へ
量産先行車の登場から25年以上が経過した2020年。この年に後継車であるE235系1000番代が登場します。E235系では普通車は全てロングシートになったほか、同車の特徴の一つである車内ディスプレイも搭載されました。
E217系はこれらE235系に順次置き換えが進められ、引退した車両は順次廃車・解体されました。ただ、いよいよ引退が見え始めたこの頃より、鎌倉車両センターを中心に撮影会イベントなどが多数開催され、帯色とロゴデザインが機器更新前のスタイルに戻されたり、2015年に消滅した湘南色帯が復活したりと、内容自体も有終の美を飾るにふさわしい、こだわり抜かれたものでした。
そしてついに2025年3月に定期運用を終了。その後も度々撮影会が開催されたほか、5月には横須賀線内で未更新時代の帯色にリバイバルされたY-101編成を使用した団体列車が運行されました。そして6月25日、いよいよE217系最後の編成が長野車両センターに送られ、現在今後の動向が注目されています。

定期運行終了後の2025年5月に運行されたE217系の団体列車。未更新時代の帯色に復刻されたY-101編成が使用された。
‘25.05.10 横須賀線 北鎌倉~鎌倉 P:桑原浩幸
(今日の一枚より)
最終的にはデビューから30年以上、横須賀・総武快速線で活躍し続けたE217系。同車の残した礎は今の車両にも脈々と受け継がれています。



