JR東日本は3月4日、「変革2027」に掲げる輸送サービスの質的な変革を推進するため、E2系およびE5系新幹線車両の後継となる次期東北新幹線車両の設計に着手することを発表した。今回設計に着手する車両は、2027年秋以降に落成し走行試験等を行った後、2030年度の営業運転開始を目指す。
次期東北新幹線車両では「TRAIN DESK」を発展させたサービスの導入等、より快適な移動空間の提供を目指し、車内空間や座席サービスをデザインしていく。また、5号車に荷物輸送用ドアを設置し、よりスムーズな積み下ろしを可能にすることで、途中駅での荷物の積み下ろし等「はこビュン」サービスの柔軟性を高めていく。
▲E10系イメージ
■次期東北新幹線車両の概要
●車両形式
E10系新幹線電車
●最高営業運転速度
320km/h
●編成両数
10両
■次期東北新幹線車両のコンセプトおよび主な特徴
●究極の安全の追求
次世代新幹線開発の試験プラットフォームである「ALFA-X」で検証してきた技術を活用し、地震対策として逸脱防止用のL型車両ガイドに加え、ブレーキ距離の短縮および地震時の揺れを吸収し車両の損傷や脱線を防止するための左右動ダンパの採用等、より高い安全性を目指した構造とする。
●お客さま志向
次期東北新幹線車両では「TRAIN DESK」を発展させたサービスの導入や、大型荷物置き場の拡幅、電源コンセントの全席設置等、より快適な移動空間の提供を目指したサービスをデザインしていく。また、車いすにお乗りいただいたまま車窓をお楽しみいただける車いすスペースの設置等、バリアフリー環境の向上に努める。
●「TRAIN DESK」を発展させたサービスの概要
TRAIN DESK の目指す「移動時間の有効活用」という価値をさらに高めるための機能を備えたサービス。シート配列を2列+2列とし、現在の TRAIN DESK と比べ隣席とのスペースにゆとりを創出する。
▲「TRAIN DESK」を発展させたサービスのイメージ
●サステナブルな社会の実現に向けて
「スマートメンテナンス」(車両の状態に応じた適切な保守)に対応可能な車両システムを導入するほか、新幹線営業車では初めての採用となる冷却モータが不要なブロアレス誘導電動機(自己通風型誘導電動機)の採用や、車両駆動インバータに高効率な SiC(シリコンカーバイド)素子の採用により車両駆動システムの効率向上を図る。
さらには、JR東日本グループでこれまですすめてきた「はこビュン」サービスをより柔軟に実現できるよう荷物輸送に対応した設備の導入や、将来的な東北新幹線の自動運転導入を目指した機能搭載の準備を行うなど、今後の持続可能な鉄道システムに向けて挑戦する。
■エクステリアデザイン
東北地方の山々を想起させる緑色を基調に、次期東北新幹線車両がつなぐ沿線各地の山々等の自然から得たインスピレーションをイメージしたカラーリングとした。上部の明るい緑色は 「Tsugaru green(津軽グリーン)」、下部の濃い緑色は 「Evening elm(イブニングエルム)」。
車体横のラインによりこれまでの新幹線のイメージを継承しながらも、日本らしさを表現するモチーフとして「桜の花弁」の形状を模した曲線を車両間でつなげ、新幹線車両のデザインに新たなイメージを吹き込む。なおデザイナーには、JR東日本の車両として初めての海外デザインファームとなる tangerine社が採用された。
▲E10系エクステリアデザイン(上記画像はいずれもJR東日本公式プレスリリースPDFより)
■その他
・今回、設計に着手する次期東北新幹線車両の詳細な仕様は、決まり次第、別途告知する。
・2027年秋以降の車両落成後は、各種の走行試験を実施し、2030年度内の営業運転開始を目指す。
・ 今後、引き続きお客さま志向で質の高いサービスの実現に向けた開発や、環境負荷軽減に向けた検討等を継続し、サステナブルな社会の実現に向けた要素の開発を進める。
・ 今後予定されている札幌開業に伴い運用する車両については、今回設計する車両をベースに別途検討する予定。