text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は今から50年以上前にあったプラレールにおけるD51のカラーバリエーション「青いD51」についてご紹介します。実車が黒色しかいないことから、今に至るまでなかなかカラーバリエーション展開ができない蒸気機関車。そんな中で、プラレール誕生初期にはこうした変わり種もラインナップされていました。(編集部)
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プラレールは65年以上の歴史の中で、その時代に合わせて変化を遂げてきました。1959年に架空の機関車をモチーフにしたカラフルな手転がし車両に始まり、1961年には海外の機関車をモデルとした初の電動車を発売、1964から1967年頃にかけて実際の日本の鉄道車両である0系新幹線「ひかり号」や103系電車「電動プラ電車」の製品化、そして1970年から1973年にかけて行われたラインナップ拡充を経て、今のバリエーションに富んだプラレールの世界に繋がっています。
このうち、1970年に発売された車種の中に実車をモデルとしつつも一際変わった姿で登場したものがありました。

▲1970年に発売された「D51きしゃ」の青色版
1970年、プラレールのラインナップ拡充が始まります。今までは遊園地のアトラクションをモチーフとしたカラフルな「ゆうえんち汽車」に、実車とは異なる赤と白のカラーリングが施された「電動超特急ひかり号」や、国鉄103系をイメージして赤・緑・黄・青の4色が発売された「電動プラ電車」と、架空の車両と日本の代表的な車両の2つという軸を持ったラインナップとなっていました。
拡充当初の新製品は「D51きしゃ」「でんききかんしゃ」の2つ。前者はその名の通り蒸気機関車D51を、後者はEF15をモチーフに製品化したものとなります。
とは言え、やはり子どものおもちゃでもあるので、相応のアレンジが加わっています。「でんききかんしゃ」は実車のEF15が戦前から戦後にかけての電気機関車では標準色だった「ぶどう色」であるのに対して、おもちゃらしさを求めてか鮮やかな赤色に成型されました。対する「D51きしゃ」は、1970年当時既に動力近代化計画に伴う蒸気機関車の廃車が進行していることを受けて「SLブーム」が巻き起こっていたことを反映してか、実車通りの黒色成型で発売されています。ただし「黒色だけ」という商品展開は多少なりとも地味になってしまうからか、カラーバリエーションとして濃い目の「青色」が用意されました。これ以前の「プラスチック汽車」「電動プラ汽車」にもそれぞれカラーバリエーションがありましたが、実在する国内の車両におけるカラーバリエーションはこの「D51きしゃ」が初めてとなります。

▲丁寧にモーターボックスの外板も車体と同色に塗られているのがご愛嬌
牽引する貨車はそれぞれ、黒の無蓋車と赤の車運車。青いD51が繋がることで3両全ての色が違うプラレールらしい見た目に仕上がっています。当時のカタログや、セット品の「D51きしゃセット」「ふくせんとっきゅうセット」「全自動ふみきりセット」のパッケージ写真にはこの青いD51が起用されており、メーカーとしてはこちらをプッシュしたかった様子が伺えます。
同年から1973年にかけて毎年複数車種が発売され、「D51きしゃ」にも派生製品が登場しました。1971年発売の「D51きゅうこうれっしゃ」と、1972年発売の「C58じょうききかんしゃ」の2つです。「きゅうこうれっしゃ」のD51は10系客車をイメージしたような青い客車を牽引しているからか、成型色は黒色。「C58」は旧型客車を牽引し、落ち着いた編成美を求めてか同じく黒色で成型されています。
1972年は日本の鉄道開業100周年にあたり、国鉄を中心に様々なイベントが開催されました。鉄道おもちゃである「プラレール」もこれに乗り、セット品の箱には100周年を記念するシールを貼ったり、記念商品として精巧な造型の「弁慶号」を発売したり、様々なノベルティの配布なども行われています。そして、当時は先述したように「SLブーム」の真っ只中。D51の貨物列車に続く客車列車の発売や、C58の製品化もこの流れに乗ったものかと思われます。
時を同じくして、151系電車がモデルの「とっきゅう」や、都電8000形がモデルの「ちんちんでんしゃ」を始めとした新たな製品が続々と登場。塗装面こそ省略されているところが多く、そこはプラレールと言った見た目ですが、造型は確実に進化していきます。そして発売以来長らく赤と白の架空カラーの組み合わせだった「ひかり号」が1972年のリニューアルに際し、実車と同様の白地に青帯のカラーリングに変更されます。
EF15は引き続き赤色のまま生産され続けましたが、「D51きしゃ」は1974年までに絶版。同製品のカラーバリエーションである青いD51も同時に消滅してしまいました。D51は先述の「きゅうこうれっしゃ」に一本化され、貨物列車は同年発売の「C-12かもつれっしゃ」がその役割を引き継いでいます。
プラレールの実車モデル製品化とSLブーム、鉄道100周年が重なった時期に登場した「青いD51」。その生産数はあまり多くなく、今では珍しいプラレールの一つとして知られています。
実車を再現するという商品展開の影響もあり、現在に至るまで蒸気機関車のカラーバリエーションというのはほとんど登場しておらず、1999年に開催された「20世紀おもちゃ博物館展」の限定品として発売された「ロータリーじょせつしゃ」に水色のC12が付属していた程度です。
プラレールの発展期に現れた「青いD51」は、試行錯誤の結果が見える一品と言えそうです。


