撮影日:2021.9.20
text & photo:福島鷺栖
水郡線という路線をご存じでしょうか。茨城県の水戸と福島県の安積永盛を結ぶ路線で、列車は一駅先の郡山まで直通しています。路線名は発着駅である水戸と郡山からそれぞれ一文字ずつとって「水郡線」となっています。「奥久慈清流ライン」という愛称もありますが、その名前の通り久慈川にも沿って山あいを行く風光明媚な路線で、「びゅうコースター風っこ」や12系の客車列車などのイベント列車も時折運行されている路線です。そんな山あいを走る水郡線にも、国鉄のディーゼル機関車であるDE10が忙しく動いていたディープなスポットがありました。
今回、一部のレイル・ファンには「西金工臨」として親しまれた砕石輸送列車の始まりの駅、西金駅のかつての様子を見ていきたいと思います。
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■そもそも「工臨」とは
工臨というのは砕石やレールなど、鉄道工事で使用する資材を輸送する列車のことで、「工事臨時列車」の略称でもあります。かつては機関車が貨車を牽引する形での工臨が多かったため、一見貨物列車のようにも見えますが、多くの運行を担当しているのは各線路工事を担当している旅客鉄道会社です。今回紹介するこの西金工臨に関しても、JR東日本が所有する車両で運行されています。
■現在はGV-E197が行う「西金工臨」
「西金工臨」とは西金駅に隣接する砕石工場から線路のバラストとして使用する砕石を輸送する列車のことです。2022年秋ごろまではDE10とホッパー貨車であるホキ800形で運行されており、西金駅では本線上での折り返しを行う入換作業を見ることができました。現在はプッシュプル運転によって入替作業が不要になったGV-E197形に置き換えられたため、側線の規模も縮小されました。
西金駅の全景。一番右側の線路が水郡線の本線。行き違い設備のないいわゆる棒線駅ですが構内は広々しています。
西金工臨の牽引機は水戸から送り込まれますが、一旦水郡線の拠点駅でもある3駅先の常陸大子駅へ引き上げます。1時間半ほど経ったのち、常陸大子駅から西金駅に再度DE10が戻ってきます。
西金駅の本線を水戸側へ一度進み、本線上で折り返しを行い側線に入る。この列車の入換の見どころの一つだ。
西金駅に戻ってきたDE10は一度水戸方へ進み、本線上で折り返して側線へ入っていきます。係員が手旗で誘導を行い、側線に留置中のホキ800に連結を行います。無線で連絡を取りながら、ゆっくりと連結作業を行い、ガチャンという連結音が山間に響くと連結完了です。列車は西金~水戸間はDE10が牽引を担当。水戸からはEF81が担当しており、JR東日本管内で機関車を用いた事業用列車が急速に消えゆく中で、貴重な国鉄型電機が活躍しているとあり、多くのレイル・ファンに注目された列車でもありました。現在は先述の通り、プッシュプル運転ができるGV-E197形が運行を担っていますが、車両は変われど今もこの西金から線路の足元を支えるバラスト用の砕石が輸送されているのです。