185系

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「なんか不思議な電車が来た」白と赤の謎の車両「East i」って知ってる?

2024.05.29

text:鉄道ホビダス編集部

▲常磐線検測を行なうE491系「East i-E」。

‘23.10.29 常磐線 松戸 P:伊藤史哉
(鉄道投稿情報局より)

 「いつものように電車を待っていたら白地に赤帯の見慣れない車両が来た…」JR東日本エリアにて、そういうような経験はありますか?

 明らかに扉も窓も少なく、その配置も不規則。屋根を見ても色々な機器でぎっしりで、明らかに一般旅客を乗せる営業車両ではないことがわかるその車両こそ、JR東日本が運用する試験車「East i(イーストアイ)」と呼ばれる車両群です。

【存在感しかない投光器も】あちこちで活躍する「East i」一族の投稿写真はこちら!

■実は3タイプある「East i」

●新幹線バージョン E926形「East i(イーストアイ)」

  JR東日本管内全ての新幹線と、北陸新幹線JR西日本管内、ミニ新幹線(在来線)となる山形・秋田新幹線の検測が可能なE926形「East i」。このE926形は2001年に初めて「East i」の愛称を持つ車両として登場しました。

 このE926形の先代に当たる925形は、東北新幹線開業前から存在しており、帯色こそ東北・上越新幹線の200系と同様の緑色でしたが、東海道・山陽新幹線の試験車と同じく、黄色い車体を持ついわゆる「ドクターイエロー」の外観をしていました。1997年に新規開業した長野(北陸)新幹線への乗り入れ対応など、アップデートも行なわれていました。
 とはいえ検測装置の発達や速度の向上、新しいATC(自動列車制御装置)への対応、フル規格新幹線の925形では入線できないミニ新幹線である山形・秋田新幹線へ直通可能な車両が必要だったことなどから、E926形の製造がなされ、925形ドクターイエローは置き換えられました。

 当時最新型のミニ新幹線用車両だったE3系をベースとしており、車体や顔はそっくりですが、扉・窓配置などは大きく異なっています。また、電気系と軌道系の検測を高速で走行しながら同時に行なえる「電気・軌道総合試験車」となっています。

●在来線電車バージョン E491系「East i-E(イーストアイ ダッシュ イー)」

 新幹線と同様に、在来線を検測する車両も旧型車が活躍する状況が続いていたため、「East i」シリーズの在来線電車バージョンとして2002年に登場したのがE491系「East i-E」です。

 E491系はE257系で採用されていたアルミ合金のダブルスキン構造を持った車体としており、車体裾が窄まる形状が同系式と似ています。もちろんE491系はJR東日本管内の電化路線であれば、ごく一部を除き交流直流問わずどこでも入線できるほか、JR東日本と直通運転を行なう第三セクター路線や、中小私鉄に乗り入れて検測を行なうこともあります。

●在来線気動車バージョン キヤE193系「East i-D(イーストアイ ダッシュ ディー)」

 先ほどの「East i-E(イーストアイ ダッシュ イー)」と見た目は非常に似ていますが、非電化区間の検測を主に担当する気動車(ディーゼルカー)バージョンとして同じく2002年に登場したのがキヤE193系「East i-D(イーストアイ ダッシュ ディー)」です。

 気動車ではありますが、測定用のパンタグラフを装備するのが特徴的。このことから一見すると気動車には見えませんが、こちらのパンタグラフはあくまで測定用となります。また、これは「East i-E」のクヤE490、「East i-D」のキクヤE193両方の特徴でもありますが、これら車両の側面には測定用の投光器が設置されており、光るとまるでイカ釣り漁船のような存在感があります。目撃した際にはこの投光器の様子も見ておきたいポイントです。

 JR東日本管内の非電化路線を中心に検測をしていますが、こちらも東北・北関東地域の中小私鉄や第三セクター、海峡を超えて北海道への検測実績もあります。なお、「East i-E」も「East i-D」のいずれも電気系と軌道系の検測両方を行なえます。

■そもそも「East i」ってどういう意味?

 これら3系式の愛称である「East i」ですが、そのうち「East」はJR東日本の東を表し、「i」には「知能の高い」を意味する「intelligent(インテリジェント)」、「統合された」を意味する「integrated(インテグレーティッド)」、「検査」を意味する「inspection(インスペクション)」の意味を与えられています。さらに、E491系の「-E」は「在来線電車」を表す「EC」から取られており、「-D」は「在来線気動車」を意味する「DC」から取られています。

■運用は基本非公表

 これらの試験車は、もちろん営業運転で使われることがないため、運転ダイヤや運用は基本的に公表されていません。そのため、出会うのには運が必要となってきます。とはいえ、検測周期やある程度のダイヤは決まっており、大体の運行を予測したり、SNS上での目撃情報を参考にこれら「East i」を狙う強者たちもいます。
 特に新幹線のE926形に関しては、気がつけばJR東日本管内で最後のGTO素子を採用するVVVFインバータの車両になってしまいました。また、秋田新幹線から引退したE3系に見た目が似ている…という点から、E3系「こまち」の面影を求めて秋田新幹線検測を一目見ようと狙うレイル・ファンなども見られ、いろいろな角度から注目が集まりつつあります。

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