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特集・コラム

【これが模型!?】超リアル「秘境駅」ジオラマ 函館本線姫川駅作品がスゴい!

2024.03.16

modeling:佐藤英也
text:RM MODELS編集部

 毎年3月にART FACTORY城南島にて開催されている鉄道模型レイアウトの作品展「LAYOUT AWARD」の、2019年グランプリの栄光に輝いた作品である『秘境駅「姫川」の秋』。

【写真】超リアルな函館本線の秘境駅ジオラマを写真で見る!

■情緒に訴えかける鉄道情景を作る佐藤さん

 この作者である佐藤さんはこの2019年の時点で三度目の受賞という、いわばグランドチャンピオン。昨年、一昨年の入賞時に佐藤さんに優勝のコメントを伺ったところ、実は入賞を狙うには作戦があるといいます。「上位入賞を目指すために、『LAYOUT AWARD』開催の季節が桜の咲く直前であることから、情景作品中に桜の木を入れ、開催時期と同じ季節感を出しておくこと。もうひとつは、チップLEDを使い光が点灯する情景を作ること。それも、見る人が『えー!』と驚いたり、懐かしいと情緒に訴えかけるような場所に効果的にLEDを仕込んで置くこと」などがあるといいます。

 来場者の印象に残る作品とすることが入賞への作戦であり、その戦略の通りに2度もグランプリに輝いたのです。

 この姫川駅の作品に関しても作者本人にどのようなことを考えて作ったかを伺うと、「今回は作戦とかはなしに、純粋に自分の作りたい風景を作りました」とのこと。作品のモチーフとした場所は北海道の函館本線の駒ケ岳駅と森駅の中間に位置する姫川駅。利用者の減少もあり2017年からは信号所へと降格した場所を今回はテーマとした作品です。
 情景自体は、まだ駅だった時代のもので、そして季節は茶色に木々が染まった秋。「作戦とかはなし」と仰られたように、それまで製作し優勝してきた作品の流れとは異なる方向のものです。それでも結果はなんとグランプリを受賞。その物言いはベテランの余裕か、「弘法筆を選ばず」という言葉を地で行くような作品結果に舌を巻いたものでした。

■メリハリの効いた作品になっている秘訣とは

 この姫川駅は林の中の掘割にあったもので、駅につながる道に自動車の入れるような道路がないこともあって、いわゆる山深い秘境駅のような雰囲気に包まれていることで、一部のレイル・ファンには人気があった駅でしたが、そうしたことで利用客も減少傾向にあったのでしょう。実際には人里離れた秘境ということはなく、駅近くには広大な農場も国道も通っており、人々の営みがまるで感じられないというほど場所ではありません。また線路は函館本線のため、優等列車や貨物列車が数多く運転され、線路自体もPC(コンクリート製)枕木に、厚く盛られたバラストの道床という、駅佇まいとは不釣り合いな立派な線路を持ちます。

 模型ではT-Trak規格のボード2枚分のスペースに、情景の大半を占めている樹木と枯れ草を表現することが目立つ工作のようです。樹木は銅線のより線の先端にオランダフラワーの繊維に絡ませたもので枯れ木を再現。枯れ草は刷毛の繊維を刻んだもの、そして雑草の猫じゃらしの繊維、それらを使い分け、地面を覆う枯れ草や、紅葉した雑木林の木々を再現しています。このほか少ないストラクチャーでは、待合室や機器室くらいと、人工物の少ない駅周辺ですが、これらも実物に合わせてプラ板、紙素材で自作。さらには信号関係の制御機器箱や通信用電柱、線路標識などが、しっかりと作り込まれ、紅葉の雑木林の情景の中に、路線の脇役によってしっかりとしたメリハリのある作品です。

■この佐藤英也さん作「姫川駅」作品も展示予定!「ART FACTORY城南島 LAYOUT AWARD2024」の紹介

「東横イン元麻布ギャラリー」が運営する若きアーティストたちの活動をサポートするアトリエ「アートファクトリー城南島」で行われる年に一度の鉄道情景模型の祭典。毎年100点以上のNゲージのモジュールレイアウトが集まり、その美しさを競います。

ここで紹介する佐藤英也さんの「姫川駅の作品も、今回ゲスト作品として、モジュールでの運転のようレイアウトの一部として展示されているので、探しに行くのも良いでしょう。なお、会期は3月17日までです。

■ART FACTORY城南島
住所:〒143-0002 東京都大田区城南島2-4-10
アクセス:JR大森駅(東口)・京浜急行線大森海岸駅または平和島駅・東京モノレール流通センター駅(南口)より
京急バス「森32系統(城南島循環)」→ 「城南島二丁目」下車徒歩3分
赤い門とレンガ調の建物です。


◆精巧な鉄道情景作品勢揃い!『スーパーリアル鉄道情景 vol.7』3月22日発売!

 鉄道模型専門誌『RM MODELS』編集部が選ぶ、Nゲージ鉄道模型で製作した、実物と見まごうほどのリアルなジオラマ・レイアウトを厳選して掲載する人気シリーズの第7弾が3月22日に発売予定!橋梁から踏切に駅舎、架空鉄道まで幅広く網羅したリアルな作品たちが、今回も多数誌面を彩ります。乞うご期待!

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