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特集・コラム

【ミニ新幹線第二世代】終焉が近づくE3系 その豊富なバリエーションとは

2024.03.14

text:鉄道ホビダス編集部

’22.4.2 東北新幹線 大宮 P:田部井毅大
(鉄道投稿情報局より)

 2024年3月16日、いよいよ山形新幹線に新型車両となるE8系がデビュー予定です。これにより宇都宮〜福島間の最高速度が300km/hとなり、速達性が向上します。一方、従来型となるE3系は置き換えられることとなりますが、その形態差やカラーバリエーションはデビューから現在に至るまで、実に豊富なものとなりました。

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■プロトタイプ編成は顔が全然違かった!

 1995年、E3系は産声を上げました。これは1997年の秋田新幹線開業を前に開発されたもので、先に登場した400系からさらに進化した新在直通・ミニ新幹線用車両として登場しました。量産先行車として落成した最初の1本目は運転台窓上にヘッドライトとテールライト、運転台窓下にHID灯が一つのライトケースに収めたものを配し、さらに先頭部の形状もどちらかというと400系に近い先が窄まったデザインで、後に登場する量産車とは大きく違うものでした。「S8編成」として落成したE3系の量産先行車は量産化改造で「R1編成」を名乗り、E6系に置き換えられる2013年まで活躍しました。

■秋田新幹線の0番代と山形新幹線の1000番代

 1997年の秋田新幹線の開業に合わせて登場した0番代。量産先行車とは異なり窓下に2つのライトケースを配するデザインとし、さらに先頭形状もよりエッジが立ったものに変更され印象がガラリと変わりました。デビュー当時は5両編成で、ひとまずR16編成までが増備されましたが、1998年には6両編成化、さらにR17編成が当初より6両編成で落成し、同編成はワイパーが2本になるなどのマイナーチェンジが行なわれました。E3系は以降もマイナーチェンジを繰り返して増備が続きます。

 1999年には山形新幹線が新庄駅まで延伸開業し、それに伴い同線にも7両編成のE3系が登場。1000番代と区分され1999年に2本(L51・L52編成)が投入されます。

 その後2002年から2005年にかけて秋田新幹線用0番台が増備され、この増備分からVVVFインバータの素子がGTOからIGBTになります。同様に、2005年に山形新幹線に投入された1000番代であるL53編成もVVVFインバータがIGBT素子に変更されました。

■2000番代の登場と観光列車に改造されたE3系

 2008年からは400系置き換え用にE3系2000番代が登場。ヘッド・テールライトのケース形状の変更や、運転台窓廻りの黒塗装も省略されるなど、それまでのE3系とはまた少し印象が変わりました。2000番代は2010年まで増備が続き、400系を完全に置き換え。さらに東北新幹線区間の併結相手が2012年よりそれまでのE4系からE2系に変更され、それに伴って最高速度も240km/hから275km/hに向上しました。そして2014年頃からは1000・2000番代含めて塗装変更が実施され、今に至ります。

 そんな長きに亘って増備が続いたE3系でしたが、秋田新幹線に導入された初期のE3系は、E6系による置き換えが2013年より活発化します。秋田新幹線をE6系で統一する関係で同線からのE3系撤退は避けられなくなったものの、比較的経年の浅いR18編成以降の車両は、山形新幹線へ転属し1000番代化されたものや、0番代のまま東北新幹線内運用に残ったものなどいたほか、一部は観光列車に改造される例もありました。それが「とれいゆ」と「現美新幹線」です。
 「とれいゆ」は観光特急である「とれいゆ つばさ」用として2014年に秋田新幹線用R18編成を改造し登場したもので、車内にはなんと足湯設備がありました。この「とれいゆ つばさ」はいわゆるJR東日本で設定される「のってたのしい列車」と言われる観光列車群の一つとして捉えられており、これは新幹線車両で初の試みでした。2016年には上越新幹線で運用された「現美新幹線」が登場。こちらも内装に現代アートが施されたデザインを持つこれまでにない新幹線として注目を集めました。

 「現美新幹線」は2020年、「とれいゆ」は2022年に運行を終了しましたが、この列車が残した速達性だけが新幹線の魅力ではない、というコンセプトが与えた影響は大きかったように思えます。

 長期間に及ぶ増備による形態差と、その後の塗装変更や改造によって数多くのバリエーションを生んだE3系。その活躍が見られるのも、あとわずかかもしれません。

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