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【神出鬼没】鉄道の未来を担う「試験車両」 一体何をテストしてる?

2024.03.08

text:鉄道ホビダス編集部

試験走行中の「「ALFA-X」。

’20.12.25 東北新幹線 郡山 P:厚海 陽
(鉄道投稿情報局より)

 日々進化する鉄道の技術。その技術は実際の走行試験によって様々なデータが蓄積され、日々私たちが乗る車両に反映されています。そんな技術開発のためだけに走る試験車両という存在をご存知でしょうか。今回はJR東日本で活躍している3つの試験車両について見ていきます。

【写真】JR東日本の試験車3車種を写真で見る!

■これからの新幹線の姿は…?E956形「ALFA-X(アルファエックス)」

 「ALFA-X」の愛称で親しまれるE956形は、2019年に登場しました。まずその鋭い先頭形状が目を引きますが、10号車のE956-10に関しては22mという驚異的なロングノーズを採用しています。また、1号車であるE956-1の先頭部は現在の主力車であるE5系と同等の16mながら、より空力を考慮した独特の形状になっています。こうした前後で先頭形状を変えるというのは新幹線の試験車では定番となっており、2種類の形でそれぞれデータを取り比較検討して、空力的により優れている方をブラッシュアップの上量産車に反映させています。

 「ALFA-X」では、E5系登場前の試験車である「FASTECH 360」で成し得なかった最高360km/hでの営業運転を見据えて試験中であり、2020年には報道公開で382km/hをマークした他、非公開の試験走行では400km/hも記録しています。

 また地震対策として風の力を利用して減速する空力抵抗板ユニットや、コイルをレールに近づけて電磁的な力によって制動力を確保するリニア式の減速増加装置、ダンパによる地震の揺れ対策なども採用されています。これには過去数回地震による被害を受けた経験によるものが活かされていると言えます。

■新幹線があれば在来線もある

 さて、「ALFA-X」が新幹線の試験車であれば、在来線の試験車ももちろん存在します。現在山手線の主力で活躍しているE235系車両制御システムである「INTEROS」。この開発に貢献した試験車が「MUE-Train」です。この「MUE-Train」は、かつて京浜東北線で活躍していた209系電車を改造して誕生した車両で、それぞれ1号車から3号車は「空気バネ式車体傾斜機構の試験」と「降雨時のブレーキ力向上試験」に供され、1号車は「WiMAXの検証試験」もなされます。5号車から7号車は「営業用車両を用いた地上設備の状態監視用機器の開発」、そのうち7号車は「営業用車両を用いた地上設備の状態監視用機器の開発」にも使用されます。ちなみに、欠番となっている4号車は「台車の性能向上試験」に使用されていましたが、試験終了に伴い2010年に廃車。現在は6両で試験走行中です。

 車両自体は209系の初期車である元・ウラ2編成の車両で構成されており、車齢も30年を超える大ベテランとなります。ですが、未来を見据えた試験走行が今も不定期ながら行なわれています。

■水素で動く試験車「HYBARI(ひばり)」

 2022年に水素燃料電池と蓄電池を電源とする新たな試験車として登場したFV-E991系「HYBARI(ひばり)」。この車両は水素を燃料に動いており、空気中の酸素と化学反応を起こし電気を発生。その過程で生じるのは水のみということで、CO2を排出しないという点から注目されている動力です。これはJR東日本が現在掲げる「ゼロカーボン・チャレンジ2050」という長期環境目標の実現を目的に開発された車両で、鶴見線や南武支線を中心に試験走行が繰り返されています。すでに水素による燃料電池車というのは自動車では実用化されていますが、自動車よりもより出力が必要な鉄道車両への応用に期待が高まっています。

 また、昨年は未来を見据える乗り物として、「ジャパンモビリティショー2023」でも車両1両が丸ごと東京ビッグサイトで展示され、非常に話題になりました。日本ではこうした展示会で本物の車両が展示される機会はほぼないため、レイル・ファンのみならず多くの人々の注目を集める結果となりました。

 このように技術開発に関する車両は日頃から試験を繰り返し、そのデータを活用して新しい車両が作られています。試験車のダイヤや走行日は基本的に非公開ですが、未来の当たり前を作るこれらの車両の活躍を応援したいですね。

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