modeling & text & photo:根本貫史(RMM)
鉄道の鉄橋は場所や用途によって様々な種類が存在しますが、多くはその路線を象徴する存在で、旅情を演出する上で重要なことは間違いないでしょう。そんな橋梁の中でもひと際特異な構造をしているのが「可動橋」です。船舶の往来が多い運河などに用いられることの多い、橋桁部分が名前の通り「動く」橋のことを指します。ここでは三重県の四日市港に実在し、今なお現役の可動橋として有名な「末広橋梁」をモデルにした、デスクトップで楽しめるNゲージのジオラマ作例をご紹介します。
■実物は重要文化財や機械遺産にも登録 実物の末広橋梁
三重県は四日市港の千歳運河にかかる末広橋梁。全国でも特に鉄道橋としては唯一の跳開式可動橋で、1931(昭和6)年の竣工から今もなお使用されています。1998(平成10)年には近代遺産構造として国の重要文化財に指定され、2009(平成21)年には経済産業省による近代化産業遺産にも認定されました。さらに2015(平成27)年には日本機械学会の機械遺産第70号にも認定され、四日市エリアの観光名所の一つとしても認知されるまでになりました。
■ディテールのためあえて「動かさない」
橋が跳ね上がる可動橋を題材とする以上、実際に模型でも動かしてみたいと考えるのは必然でしょう。しかし、その場合だと複雑な機構を組み込む必要があり、それにより外観やディテールが犠牲になってしまう場合もあります。そこで今回は車両展示用のジオラマ及び、両端に線路を接続することで、フロアー運転も可能なモジュールとして割り切り、非可動(ダミー)として製作しました。
■製品を活用しつつリアルに再現!
このジオラマのベースはA3サイズの木製パネル。そして可動橋の本体は雰囲気のよく似ていたKATO製の単線プレートガーダー鉄橋(灰)を2本使用しています。そこから自ずと両端の線路はKATO製ユニトラック(S72.5)を2本使用することになりました。プレートガーダーは1本は可動桁用として長さをレザーソーでカットして短縮。もう1本は両端の固定橋桁として半分にカットしたものを両端に配置しました。
可動橋で一番目立つ存在の可動桁を持ち上げるウインチが備わる門型鉄柱は、エンドウの16番用架線柱プラキットを流用して再現。こうした橋梁などの構造物は、形状さえ似ていればスケールが異なっていても、工夫次第でどんなものにも化けるのが模型工作の醍醐味でしょう。ケーブルはΦ0.5の真鍮線を貼り付けて再現しています。
鉄道橋としては現役唯一の跳開式可動橋の末広橋梁。その魅力をA3サイズにギュッと凝縮したファンにはたまらない作例でしょう。
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▲リアルに再現された昭和時代の鶴見線国道駅。
鉄道模型専門誌『RM MODELS』編集部が選ぶ、Nゲージ鉄道模型で製作した、実物と見まごうほどのリアルなジオラマ・レイアウトを厳選して掲載する人気シリーズの第7弾が近日発売予定!今回もリアルな作品たちが誌面を彩ります。乞うご期待!