text:鉄道ホビダス編集部
▲2010年夏に豊田車両センターで行なわれた201系展示会。
‘10.8.22 豊田車両センター P:田中 友
(鉄道投稿情報局より)
1979(昭和54)年に試作車が登場し、1981(昭和56)年から量産が開始された国鉄201系電車。デビュー当時は「国電のニューフェイス」として、従来の101・103系を置き換えていきましたが、最終的には103系の総製造数の3分の1にも満たない1018両が造られただけに留まりました。
■「省エネ電車」中央線に登場
オイルショックの影響により、それまでの大量消費の時代から徐々に「省エネ」という言葉が出始めた1970年代末、国鉄の最新鋭通勤型として誕生したのが201系でした。制御装置には電機子チョッパ制御を採用し、ブレーキ時にはモーターを発電機として活用し、電力を架線に戻す「回生ブレーキ」を実現したことでよりエネルギー効率の良い電車として鳴り物入りでデビューしました。1979年、「省エネ201」のヘッドマークを輝かせながらの運行開始は、実に華々しいものでした。
デザイン面でも従来の国電とは大きく異なり、暖色系の色を使ったシート、洗練された車内送風機、全車冷房完備、左右非対称で黒色に処理され引き締まった前面廻り、スマートな角型ベンチレーターの採用など、見た目でも非常にエポックメイキングな車両でした。
■中央・総武線に京阪神緩行線にも投入 しかし…
オレンジバーミリオンの中央快速線に始まり、カナリアイエローの中央・総武線、さらにスカイブルーの京阪神緩行線と関西圏にも進出した201系。兄弟車として地下鉄直通対応のアルミ車203系も登場し、その増備は順調に思われていました。
ですが、財政的に厳しかった当時の国鉄は、コストの高い201系の製造に苦戦し、製造末期には細かくコストダウンを図った通称「軽装車」の製造に踏み切りました。ですがこれでも大幅なコスト削減には繋がらず、以降はオールステンレス車である205系の製造へ切り替わり、201系の製造は終了しました。
■JR化後続く変化 愛される電車へ
とはいえ、1000両以上が造られた201系。特にそのうち大多数を占めたオレンジ色の中央快速線用201系は、いつしか中央線の「顔」として定着します。特徴的な装備として、登場当時は101・103系と同じ種別ヘッドマークを掲げていましたが、201系統一時に廃止されてしまいます。ですが、JR化後に差し込み式としてヘッドマークが復活し、これはのちに電動幕式の種別表示器に発展していきます。201系前面に取り付けられたこれらの種別表示各種は中央快速線系統独自のもので、同線の201系を象徴する存在として、グッズなどで今なお人気のモチーフです。
また車体色に関して京阪神緩行線でのみ見られたスカイブルーでしたが、2000(平成12)年から中央・総武線用の201系が京葉線に転属した際、関東でもスカイブルーの201系が誕生しました。
逆に関西圏では京阪神緩行線から大阪環状線に転属した車両が中央線のようなオレンジバーミリオンへ、また関西本線やおおさか東線に転属した車両に関しては、国鉄時代には存在しなかったウグイス色の201系が登場したことで話題になりました。
●観光列車に改造された201系
通勤型電車としては珍しい、観光を目的にした改造車である「四季彩」もこの201系でした。同車は2001(平成13)年に登場し、渓谷の景色が美しい青梅線沿線の景色を楽しめるよう、多摩川に沿う側の座席をクロスシート、または折りたたみ式のシートに改造し、さらに1枚窓として眺望を楽しめる工夫がされていました。2005(平成17)年には新塗装になりましたが、2009年に引退しました。
■トップナンバー保存車 実は車籍もある
営業列車からは全車が引退したJR東日本でも、時折201系をモチーフにしたグッズやイベントが開催されているほか、豊田車両センターに保管されているトップナンバー先頭車「クハ201-1」は、時折有料撮影会で姿を見せるなど、その人気はいまだに衰えません。なお、この「クハ201-1」は中央線から201系が引退した後も車籍を残していることでも有名です。すなわちこの1両が廃車となると、正真正銘JR東日本から201系が消滅することになります。
■最後の201系はどこに
各地で愛された201系でしたが、寄る年波には勝てず、JR東日本からは2011年に営業車両が消滅、残るJR西日本でも置き換えが急速に進行し、現在では関西本線で活躍するウグイス色の201系のみになっています。JR西日本の201系は徹底した更新改造が施されており、戸袋窓の埋め込みやベンチレーターの撤去、張り上げ雨樋化や内装の更新など、原型からは大きく変貌を遂げましたが、懐かしいチョッパ制御のサウンドは今も健在です。とはいえ、置き換えは現在進行形で行なわれており、完全引退までは秒読み段階に入っていると言えます。
現役車も残りわずかとなった201系。路線を象徴するような装備を持っていたり、各地で異なるカラーリングやチョッパ制御のサウンド、特徴的な車体デザインなどがあってか、熱狂的なファンも多い同車。最後まで無事に走り続けてほしいものです。