text & modeling & photo:根本貫史(RMM)
1980年代当時のロマンスカーを代表した形式である7000形LSEと10000形HiSE。現在ではいずれも引退してしまったが、小田急ロマンスカー史に名を残す名車であることには変わりはない。今回はこの2形式のNゲージディテールアップ作例を紹介しようと思う。
■複雑な連接構造を再現した画期的な現行仕様製品
1980年代の小田急沿線に住む少年たちの憧れの的だったロマンスカーの製品たちは、改良を続けながら今なお販売され続けているロングセラーだ。Nゲージ製品では、7000形LSEの実車登場後間もない1981(昭和56)年にTOMIXから製品化。まだ日本型Nゲージ黎明期ともいえる時期に、実車の連接構造まで忠実に再現された画期的な製品が登場した。2000年代以降は追随するようにバリエーションが展開され、ほぼすべての仕様が製品化されている。
■塗装・部品取付・部品加工でロマンスカーを細密化!
今回作例のベースにしたのは、7000形LSEは復活旧塗装・ブランドマーク付の7003F(品番92894)と10000形HiSEはロゴマーク付(10001F)をベースに加工(品番92845の旧製品)した。ここから7000形LSE/10000形HiSE共通の加工ポイントの他、それぞれの車種の加工ポイントを解説していこうと思う。
■7000形LSE/10000形HiSE共通加工ポイント
車体はMr.スーパークリアー光沢で塗装。妻面がない連接構造なのを活かし、ニコイチに組んで塗装している。屋根はエアブラシによる塗装でのウェザリングと、スミ入れでタッチアップ。塗るだけでも十分雰囲気が出てくる。もちろんパンタグラフもプライマー処理後、シルバーで塗装。その上からエアブラシで集電舟付近にダークグレーを吹き付けてウェザリングしている。加えて車内も塗装・タッチアップをする。
ヘッドライトはそのままだと白色となるので、チップLEDの表面全体をクリアーオレンジに着色して電球色化した。さらに旧製品特有の問題として、モノによっては残ったバリで隙間ができ、光漏れが生じる場合があるので、こちらも除去しておこう。
10000形は側面の愛称表示を点灯させるため、光源がプリズム中央にあるマイクロエース製を使用した。運転台内部はつや消し黒で塗装し、椅子は赤系で着色。さらにジオコレの乗務員を胸元でカットしたものを接着した。
内装ディテールの一つとして、カーテンの表現にはテープを使用。これは最近雑貨として人気のカラーマスキングテープが便利だ。また、実車の10000形展望席側面窓のピラーは、内側が太くなっている(表側は黒色処理)が、これを再現するために作例では1.5mm幅に切った黒色のテープで再現している。また、グレーのビニールテープで外周幌を表現もしている。
■7000形LSE加工ポイント
LSEの加工ポイントとして、まずは展望室及び運転室内の加工をした。この車両は窓が大きいので効果は絶大だ。屋根上はウォッシングとスミ入れによりディテールを強調している。パンタグラフ廻りは作例では配管を着色、スミ入れを施すことで立体感を出した。
また、先頭車が若干「ウィリー」していたので、台車の首振り機構にある突起を0.8mm、集電スプリングも3段ほどカットして車高の調整も行なっている。愛称表示は窓側を薄めたライトグレーで塗装し、自作したクリアーステッカーを貼って幕らしさを表現した。
■10000形HiSE加工ポイント
HiSEの方では展望席に乗客を配置した。初期車(10002Fまで)特有の赤青交互配置の座席も着色にて表現。こちらも屋根上はウォッシングとスミ入れによりディテールを強調。ちなみに屋根上のキセは換気用で、冷房装置は床下にある。パンタは下枠交差式。配管を着色しスミ入れを施してある。
LSEとは異なり、先頭車側面に付く愛称表示幕。HiSEの大きな特徴の一つでもあるので、室内灯を光源として点灯化している。Φ0.5のピンバイスで窓周囲に穴をあけ、カッターで開口。そこにt0.5のプラ板をはめ込み、自作ステッカーを貼ることで実現させた。
4号車(手前)には公衆電話用のアンテナと8号車(奥)には台座のみを追加表現。パーツはGMキットの余剰品を活用した。
ロングセラー製品でも、ディテールアップを施すことでより実車の印象に近づけることが可能だ。このように、思い出のロマンスカーを自分流にリアルにしてみるのもまた一興だろう。
(『RM MODELS』2016年12月号 Vol.256 より加筆修正)