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【日本製も活躍】鉄道の「ハイブリッド車」世界でも当たり前に!?

2024.01.26

text & photo:橋爪智之

イギリス都市間特急の現代の主力は日立製800系列シリーズ。同系列は電気およびハイブリッドと、使用環境によって動力タイプを変更できる柔軟性が特徴で、瞬く間にイギリスの主力車両の地位を確立した。

2023.3.19

 ヨーロッパでは、それまで主流だった蒸気機関車が牽引する列車に替わる形でディーゼル車両が普及し始めて以降、これまで数多くの気動車やディーゼル機関車が誕生した。とりわけ、1957年に当時の西ヨーロッパを中心に運行を開始したヨーロッパ横断特急TEE(Trans Europe Express)は、運行開始に先立ち各国で用意された車両はすべて気動車だった。

【写真】各国の特急型気動車・ハイブリッド車の事情を見る!

 背景には、各国とも電化の普及が遅れ、まだ多くの非電化区間が残っていたという理由もあるが、電化方式の異なる区間を直通できる複電圧車両の開発が遅れ、国際列車は国境での機関車交代を余儀なくされていたことから、それを解消するという目的もあった。
 その後は、複電圧車両の開発が進んだことで、TEEは客車列車などへ置き換えられ、余剰となった特急型気動車は、後に国内列車などへ転用された。20世紀も後半へ差し掛かると、幹線の電化が進んだことで、優等列車は電車もしくは電気機関車牽引が主流となり、非電化区間に残った優等列車も柔軟な運用が可能なディーゼル機関車牽引の客車列車が大勢を占め、気動車は少数派となった。

 しかし、近年は環境問題がクローズアップされるようになったことで、電化区間では電車として走行し、非電化区間ではエンジンで走行するハイブリッド車両が老朽化した機関車牽引の客車列車に替わる形で投入されている。一方、一部の国では幹線が非電化のまま残り、21世紀へ入ってからも特急型気動車が活躍している国もある。
 今回は、そんな欧州圏の特急型気動車、およびハイブリッド車両についてご紹介しよう。


■日本製も活躍!イギリス

 いまだ多くの非電化路線が残るイギリスは、気動車特急の宝庫だった。主要幹線である東/西海岸本線こそ電化されているが、そこから枝葉のように分かれる支線は大半が電化されていない。グレートウェスタン本線はつい最近までほぼ非電化、近年になってようやく電化区間が延伸されたが、今も路線の大半は非電化となっているため、電車を投入することができない。ミッドランド本線も電化区間はベッドフォードまでで、優等列車は気動車で運行されている。ただし環境問題がクローズアップされる中、各本線については現在、電化区間の延伸工事が進められている。
 そんなイギリス都市間特急の主力として、イギリス各地でその姿を見られるのが、日立製800系列(Class800)だ。日立の特急用車両AT300シリーズで、その中心となるのが電気・ディーゼルのハイブリッド仕様である。路線ごとに使用環境が異なるため、例えば非電化区間が長く、途中に山岳区間が含まれる路線向けに、燃料タンク容量を増やし出力を強化した802系のように多くの派生車種が誕生している。現在も製造が続けられており、後述する気動車を順次置き換えていく予定だ。

 1976年から活躍を続けてきた43型機関車+Mk3型客車、いわゆるIntercity125は、日立製800系列の投入によって徐々に置き換えられつつある。両端に43型ディーゼル機関車を連結した客車によるプッシュプル運転だが、編成は基本的に固定化されている。
 他にアルストム製180系(Class 180)気動車や、旧ボンバルディア製ヴォイジャー・シリーズ220/221/222系などが運用されているが、いずれも日立の800系列によって置き換えられていく計画となっている。

■今も気動車が主力 デンマーク

 まだ多くの非電化区間を抱えるデンマークは、幹線以外は現在も気動車が主力となっている。優等列車には、1988年から投入されたIC3型気動車が使用されており、ドイツ方面の国際列車にも使用されている。老朽化により、当初は引退する計画だったが、後継車両の不具合によって延命を余儀なくされ、更新を受けて引き続き使用されている。

■客車列車からシフト フランス

 フランス非電化区間の優等列車は、長らく機関車牽引の客車列車によって運行されてきたが、一部はアルストムの汎用型連接車両「レジョリス Régiolis」シリーズの都市間仕様によって置き換えられている。レジョリスは近郊用と都市間輸送用に作り分けられ、電気、あるいはディーゼルエンジンを搭載したバイモード仕様を選択することができる万能車両で、パリ東駅を起点としたフランス東部方面の列車は、途中まで電化されているためバイモード仕様の車両が投入された。


●トラブル続きで早期引退をした車両も…

 ICEの気動車版として人気の高かった、ドイツのICE-TD(605型)。国際列車にも使用されたが、車体傾斜装置の不具合によって頻繁に運用から外され、一部はデンマークに貸し出されるも結局長続きはせず、誕生からわずか17年で営業から退き、試験車両へ改造された1編成を除いてすべて解体されてしまった。誕生から引退まで、トラブルに悩まされ続けた車両だった。

 日本でも近年ハイブリッド式の気動車が徐々に普及し、従来型の気動車を置き換える例が見られるようになりつつある。かつての蒸気機関車がそうであったように、今後は気動車という区分けも、過去のものとなっていくのだろうか。とはいえ、まだまだ気動車の活躍はしばらくは見ることができそうだ。

(『RM MODELS』2023年8月号 Vol.335 連載「世界鉄道」より加筆修正)

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