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特集・コラム

【今月70周年】赤い丸ノ内線 海を超えて愛された「サインウェーブ」の歴史とは

2024.01.15

▲500形759号。昭和37年10月23日汽車會社製。昭和32年~39年に234両製造された主力車で、同400形を片運転台構造にしたもの。

’94.6 旧営団地下鉄(現・東京メトロ)丸ノ内線四ツ谷 P:川崎雅道
(消えた車両写真館より)

 1954年に池袋から御茶ノ水まで開業したのを皮切りに誕生した「丸ノ内線」は、今月で70周年を迎えます。地下鉄とはいえ浅い場所を走る丸ノ内線は、一部区間では地上を走るほか、中野坂上からは方南町まで伸びる支線(方南町支線)があったりと、さまざまな顔を持ちます。そこを走るのは真っ赤な車体と波模様の帯が特徴的な車両たち。実はこのデザイン自体の発祥は、70年前の開業当時まで遡ります。

【写真】最新2000系から懐かしの旧型車まで!写真で振り返る丸ノ内線

■モダンな印象を持って生まれた初代車両300形

 丸ノ内線の開業を控えた1953年、初代車両となる300形が落成します。まだ戦争が終わって10年も経っていなかった頃であったのにも関わらず、両開き扉、カルダン駆動や電磁直通ブレーキなど、ニューヨーク市地下鉄を参考にした最新の主要機器類、ヘッド・テールライトは鍵穴型に収めて窓下に配置した前面スタイルなど、当時他では類を見ないほど最新のものをふんだんに取り入れた車両としてデビューします。
 特に車体デザインは真っ赤に塗装された上に白帯を配し、そこにステンレス製の波模様の飾りが取り付けられました。この波模様は「サインウェーブ」と呼ばれ親しまれるようになります。なお、当時の国鉄電車は、吊り掛け駆動で茶色一色塗り、そして片開き扉というスタイルが主流だったことを考えると、300形の斬新さが分かるかと思います。

 300形の登場の後は400形、500形、900形(中間車のみ)とマイナーチェンジを続けながら増備が繰り返されていきましたが、「赤い車体と白帯にサインウェーブ」という象徴は引き継がれていきます。

■02系導入で一時は失われたサインウェーブ

 1983年、銀座線の旧型車を一掃するべく登場した01系。通称「0シリーズ」の嚆矢となった車両ですが、この01系を基本としつつ丸ノ内線向けに1988年から導入が始まったのが02系です。
 02系では従来の車両のイメージを一新し、アルミ製の無塗装車体に丸ノ内線のラインカラーである赤にアクセントである白の帯を配したものの、サインウェーブ自体はこの時消えてしまいます。1996年には最後まで残った旧型車が全廃。42年間愛されたサインウェーブはこの時姿を消しました。

 そんな旧型車の置き換えから14年ほどたった2010年、一部の02系が改修工事を受けることになります。その際、外観デザインの変更がなされましたが、ここで伝統の「サインウェーブ」が復活することになります。丸ノ内線50周年を記念したラッピングが施された際、一時的に復活することはありましたが、この改修により一時的ではなく、正式にサインウェーブが戻ってきました。
 なお、この改修工事では内装にも手を加えられ、その際の内装色も300形を意識したサーモンピンク系統の色とされています。

■最新2000系でも採用されたサインウェーブ

 その後02系は2019年にデビューした2000系で順次置き換えられることに。この2000系は製造当初より赤い車体と白い帯、そしてサインウェーブのフルラッピングを纏って登場しました。前照灯も300形由来の鍵穴型とされ、過去の車両へのリスペクトが感じられるデザインになっています。また、サインウェーブの帯はホームドアが設置された現在の丸ノ内線でも見えやすいよう車体上部に配され、現代の事情に合わせた変更がなされているのもポイントの一つです。
 現在は2000系による置き換えが進み、02系も残すところわずかな本数となりました。

■地球の裏側を走ったサインウェーブ

 日本で役目を終えた500形をはじめとする旧型車の一部は、地球の裏側であるアルゼンチン・ブエノスアイレスでなんと現在でも活躍を続けています。現地オリジナルの塗装に変更された車両もいましたが、オリジナルのサインウェーブを保った車両も活躍し、このカラーリングは海を超えて愛されることになりました。

 そんな中、社員教育や技術伝承などを理由に2016年にブエノスアイレスから4両が日本へ里帰りし、2017年に整備・復元工事が完了しました。これら里帰りをした車両については、教育などを目的としていることから走行可能な動態保存車とされているのが特筆すべき点です。保安装置やホームドアの関係から難しいかもしれませんが、いつしか本線を走る姿というのももう一度見てみたいものです。

 長きに亘って愛される丸ノ内線のサインウェーブ。歴代車両から現在の車両に受け継がれ、これからも末長く「丸ノ内線の象徴」として残り続けていくことでしょう。

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