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新旧同時発売!阪神の主力8000系のプラレール その造形がスゴかった!

2023.11.17

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は、2015年に発売された阪神8000系のプラレールをご紹介します。この製品は「赤胴車」と呼ばれる旧塗装と、リニューアル後の新塗装の両方が製品化された上、車体の造形もこだわり抜いたものとなっており、話題になりました。(編集部)

【写真】阪神電鉄限定で発売されたこだわりのプラレールの写真はこちら


 新旧塗装が存在する形式で、両方のカラーリングを製品化した私鉄限定のプラレールは、いくつか存在します。こうした商品展開をした事業者は、京浜急行電鉄、小田急電鉄、そして今回ご紹介する阪神電鉄が当てはまります。阪神電鉄は過去に1000系、8000系、5700系の3形式を製品化しており、そのうちの8000系は未更新車「赤胴車」とリニューアル車の2つを同時発売し話題になりました。阪神の主力車両なだけあり、かなりこだわりのある造型をしています。詳しく見ていきましょう。

▲2015年10月に発売された「阪神8000系(赤胴車)」と「阪神8000系(リニューアル車)」

 阪神8000系のプラレールは2015年10月11日に発売され、「赤胴車」が各駅の駅長室、「リニューアル車」はオンラインショップのみでの取り扱いという、私鉄限定品としては変わった流通方法を持ちました。「赤胴車」は8239F、「リニューアル車」は8247Fがモデルとなっています。

▲車体は同一だが、細部の塗装や印刷でリニューアル前後を表現している。

 両色とも「タイプIV」と呼ばれる後期車をモデルとしています。クーラーキセ、先頭車屋根上の先が絞られた雨樋の形状の再現も見事です。赤胴車は8240号が先頭に立つ「急行 甲子園行き」、リニューアル車は8247号が「直通特急 阪神梅田行き」となっており、車両を正しい向きですれ違い遊びに対応させる配慮がされています。ここはさすが私鉄限定品だと思えるこだわりの一つです。
 標識灯は内部のモールドの無い出っ張りとして成型され、共に印刷により赤胴車の2灯を、リニューアル車のLED1灯をそれぞれ表現する力の入れようが見られます。側面には車外スピーカー、車側灯、行き先表示器がモールドで表現され、特に方向幕は赤胴車が白色に、リニューアル車が黒色に塗られており、方向幕とLEDの違いを再現しています。

▲車体側面両端にある車番と社章は印刷表現。

 特に注目すべきは転落防止幌の造型です。グレーで塗り分けているのはもちろん、保持するための留め具までもしっかり成型されています。連結間隔が広いプラレールでは省略されてしまうことが多い転落防止幌ですが、これが造形されているだけで編成にした際の全体の印象が引き締まります。

 8000系赤胴車は2015年5月を最後に全編成がリニューアルされ、プラレール発売時点では既に過去のものとなっていました。「阪神電車と言えばこの色」というイメージのある従来の赤胴車と、現在のイメージを担うリニューアル車を同時に発売することで、思い出の阪神電車と今の阪神電車をプラレールとして手元に残せるという、粋な商品展開を行なったのが特筆できます。

 ちなみに、8000系発売の2年後である2017年には新型車両の5700系が発売されましたが、側面デザインの再現を重視して2扉デフォルメの車体造形になりました。ただ、その点がこの3扉造形の8000系と並べた際に気になってしまう、という声も聞かれました。

 製品化された形式の他にも、9000系や9300系、5500系など魅力的な車両が多くある阪神電鉄。最後の製品の発売から早6年、新たな製品展開にも期待が寄せられます。

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