185系

特集・コラム

「車上型」制御付き自然振子方式とは?「新型やくも」273系のメカに迫る!

2023.11.13

text & photo:RM
取材日:’23.10.17 場所:近畿車輛
取材協力:西日本旅客鉄道

 国鉄型電車を使用する最後の特急列車となっている「やくも」ですが、ついに置換用の新型車両273系が登場しました。現在伯備線において試運転が開始されていますが、381系以来伝統の振子式のメカニズムが大幅に進化しているとのことです。

273系は4両編成で、381系よりも車種構成がスッキリします。

 そもそも振子式車両は381系で採用された自然振子方式から、JR初期の時代に登場したJR四国2000系気動車による制御付き自然振子方式で大きな技術的ブレークスルーを果たしました。制御なしの381系方式の場合、カーブに入って実際に車体が傾くまでにタイムラグが生じ(いわゆる「振子遅れ」)、乗客が乗り心地に違和感を抱きひいては乗り物酔いに繋がる…という弱点があったのです。

▲クモハ273-1。

▲モハ272-101。

 そこで、あらかじめ線路の曲線半径や位置などをマップデータとして車両側に記憶させ、ATS車上子を利用して自車の走行位置を検知。カーブに入るタイミングで振子アクチュエータを作動させてあらかじめ車体を傾け、振子遅れが出ないようにする…というのが制御付き自然振子方式の基本的なメカニズム。

▲モハ273-101。

▲クモロハ272-1。

 しかしこの方式もまだ完璧ではなく、数が限られているATS車上子だけでの自車位置検知だと車輪が空転したりした際にどうしても誤差が発生する…という弱点がありました。そこで今回の273系ではさらに「車上型位置検知」の仕組みを導入しています。これは車体にジャイロセンサーを搭載し、カーブ通過時の車体の動きとマップデータを照合することで自車位置を検出。これと従来通りのATS車上子からの位置検知と合わせて、連続的に極めて高精度で自車の現在位置検知が可能になったというもの。これにより従来よりもさらにタイミング良く振子アクチュエータを作動させることが可能となりました。

▲電動台車のWDT71。

 381系よりさらにスムーズな振り子動作が可能となる273系。その乗り心地を実感する日が来るのを楽しみにしたいと思います。一方では引退時期が確実に迫っている381系に対し、乗車や撮影で悔いが残らないよう思い出を作っておきたいものですね。

 さて、去り行く381系「やくも」の雄姿をたっぷり収録したムック、題して「ザ・ラストモーメント 381系「やくも」」はもうご覧いただけたでしょうか。

 381系の興味深い振り子装置の発達史と、後継の振り子車両たちを一覧できる記事を掲載。そしてこの「やくも」のラストワンとしての存在を珠玉のグラフでご紹介します。
主な新規記事
・読者傑作選グラフ…約500点におよぶ応募のあった読者作品から厳選。
・スペシャルギャラリー・381系「やくも」/EF64 1000の牽く貨物列車
・瀬戸大橋開通35周年、開業時回顧録
・津山まなびの鉄道館
主な再録記事
・日本の振り子車パイオニア381系
・走り始めた“WEST EXPRESS銀河”
・岡山、国鉄天国!
・岡山地区における国鉄型気動車の現況
ほか

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