text:鉄道ホビダス編集部
鉄道車両は、導入される路線事情によって異なりますが、基本的に量産されることが前提として作られるものが大半です。理由として保守や運用面で車種が統一されている方が効率が良いためや、大量製造によるコスト削減など様々です。そんな中、たった1系式で1編成作っただけという「レア」な車両もいます。中小私鉄などではよく見られますが、今回は大手私鉄やJRで存在した営業用車両の少数派について触れていきます。
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■東京メトロ06系
‘11.10.23 常磐線 亀有 P:柿葉祐太
(鉄道投稿情報局より)
1993年、有楽町線07系と同仕様の千代田線の増備車として1編成のみ登場したのがこの06系。登場した理由は輸送力増強のためのもので、旧来の車両の置き換え目的ではなかったため、少数にとどまる結果となりました。なお兄弟車とも言える07系は6編成60両が製造されました。なお、この06系は電気系統の故障により保守部品確保が難しくなり、2015年8月上旬に新木場車両基地へ自力回送され、07系へ利用可能部品を外した後、解体されました。
■JR九州キハ71・72
JR九州の観光特急「ゆふいんの森」で使われるキハ71系とキハ72系。「ゆふいんの森」専用に作られた車両で、それぞれ各系式ごとに1編成ずつしか存在しません。キハ71系は民営化間もない1989年3月にデビュー。欧風なイメージの外観をしており、非常にユニークな車両ですが、台車やエンジンはキハ65やキハ58といった国鉄急行型車両から流用しています。
「ゆふいんの森」は人気となり、1992年にキハ183系1000番代を「ゆふいんの森II世」に改造し増発しました。ですが、車両サービスをキハ71と同等のものとするため1999年に完全新造されたのがキハ72系です。特定列車でのみ使用されること、検査時やトラブル時は別車両(キハ185系)で代走可能なことなどが少数にとどまった理由に挙げられます。
■JR東海371系
P:RM
371系は主に、JR御殿場線から小田急線に直通する特急「あさぎり」で使用されていた特急型電車です。当時JR東海と小田急では相互直通運転を行なっており、小田急側は20000形RSEを使用して「あさぎり」の運行をしていました。ただし、20000形は2本在籍したのに対して371系は7両1本のみで、検査時は20000形が代走をする場面も見られました。ただ、運用が限定されていたことに加え、2012年には相互直通が終了し、増備などはなく2014年に引退しました。現在は富士山麓電気鉄道に譲渡され、8500系「富士山ビュー特急」として運行されています。
■近鉄3000系 ほか
近鉄のオールステンレス車体、および電機子チョッパ、京都市交通局地下鉄線(現在の烏丸線)との相互乗入対応用の先行試作車として落成した3000系。オールステンレス車としては東急車輛以外が製造(近畿車輛)した初めての例でもあります。当初から試作車として落成したため増備されることはなく、4両編成1本のみの珍しい存在でした。また、近鉄唯一のステンレス車であったことから、その見た目も非常に目立つものでした。2012年に廃車となり、現在はク3501前面のカットモデルが保存されています。
この他にも近鉄には仕様により細かく系列が分かれていたり、団体列車用の車両という理由から1本しかいない系式がいくつか存在しています。
■JR東日本 E331系
‘10.1.26 京葉線 南船橋 P:霜田博行
(鉄道投稿情報局より)
E331系は国鉄、およびJRグループ内で初めてとなる連節構造を持った電車として2006年に製造された通勤型で、2007年より京葉線で運行を始めました。構造だけでなく、2989mmと従来より39mmも広い全幅や、13m級の短い車体に3ドアの配置、さらにはモーターの動力をギアボックスを介さず伝える「DDM(ダイレクトドライブモータ)」と呼ばれる駆動方式を採用するなど、新機軸を多数盛り込みました。
試作車や試験車といったものでは特段ありませんでしたが、次世代車両の試験車E993系「ACトレイン」の結果を基に、実用的な技術検証等を行なうために製造された側面もあり、そのため14両1編成のみの投入とされました。ただ営業運転開始後、トラブルなどに見舞われることが多くあり、長期の営業運転離脱や度重なる試運転が目立ちました。2010年から京葉線にE233系の投入が発表されると、E331系は置き換え対象外とされましたが、2011年1月を最後に営業運転を離れ、それから3年後の2014年3月に長野へ回送、そのまま廃車となりました。
「運用が限定されるため」「増備のため」「試験のため」と、少数派の車両にもそうなる理由はさまざまです。また、唯一無二の車両はメンテナンスや運用の効率化などを理由に、早期に引退することも多くあります。レアな車両は会えるうちに会いに行くのが吉でしょう。
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