text：鉄道ホビダス編集部
‘20.3.18 東海道新幹線 静岡〜掛川 P：大谷真弘
（鉄道投稿情報局より）
東海道・山陽新幹線において、一際目立つ車両である923形、通称「ドクターイエロー」。ダイヤが公表されておらず神出鬼没なこと、そしてその黄色い車体から「見ると幸せになれる」と、一種の縁起物としてレイル・ファンのみならず、子供から大人まで広く知られる車両です。そんな「ドクターイエロー」ですが、実のところはどういった車両なのでしょうか？
■新幹線のお医者さん
「ドクターイエロー」というのは通称であり、正式には「新幹線電気軌道総合試験車」と呼ばれる車両で、軌道や架線の状態が正常であるかどうかを走行しながら検測することが可能となっています。その役目から「新幹線のお医者さん」と例えられることも多く、ドクターイエローの「ドクター」はこうした車両の性格から来ていると言えます。
また、7両編成の各車には役割分担がされています。以下がそれぞれの役割です。
- 1号車：信号／通信／変電／電車線関係の測定
- 2号車：電力関係測定／トロリ線（架線のパンタグラフに接する線）の摩耗測定
- 3号車：観測ドームを装備／データ処理／測定用電源供給
- 4号車：軌道関係測定／データ処理
- 5号車：観測ドームを装備／多目的試験／測定用電源供給
- 6号車：打ち合わせ室装備／電力関係の測定
- 7号車：添乗者室装備／信号関係の測定
●実は2種類いるドクターイエロー
さて、現在のドクターイエローは923形という形式で、製造初年は2000年となっています。車体や主要機器類は当時最新鋭の700系をベースとしており、最高速度は270km/hです。そんなドクターイエローですが、実は2種類いるのはご存知でしょうか？というのも、JR東海所属の0番代のほかに、2005年に追加で製造されたJR西日本所属の3000番代が存在しており、0番代はT4編成、3000番代はT5編成とも呼ばれます。両編成とも外観上の違いはほぼないですが、T5編成には台車付近の車体裾にジャッキアップ用穴あることや、7号車屋上にでっぱりのようなアンテナがあるなど、細かく仕様変更されています。
■東海道新幹線で見られる最後の「700系フェイス」
’22.07.27 東海道新幹線 東京 P：東條ともてつ
現在の923形になる以前のドクターイエローは、922形10番代（T2編成）・20番代（T3編成）という車両でした。この車両は0系をベースに製造された車両で、特にJR西日本所属の20番台T3編成は、T5編成が落成する2005年まで活躍し、当時は東海道新幹線で活躍する最後の0系フェイスの車両として注目を集めました。
時は流れ2023年、東海道新幹線から700系が完全引退したことで、気がつけば923形もかつての922形と同じように東海道新幹線で見られる最後の700系フェイスとなってしまいました。もちろん色は黄色で7両編成、試験車ゆえに通常乗ることはできず、先頭部には監視カメラが設置されており、オリジナルの700系とは異なる点も多いですが、カモノハシにも例えられた特徴的な前面形状を見ると、700系全盛期を思い起こさせます。
■近年では体験乗車イベントなども
▲2023年3月22・23日の2日間、東京～新大阪間を2往復4本が運行された「ドクターイエロー」の体験乗車イベント。その運行の様子。編成はJR東海のT4編成であった。
‘23.3.22 東海道新幹線 静岡～掛川 P：大谷真弘
（鉄道投稿情報局より）
先述の通り、試験車両なので旅客営業とは無縁なドクターイエローですが、近年では体験乗車イベントなども一般向けに行なわれるようになりました。2023年の3月に初となるドクターイエローの走行乗車体験イベントが行なわれ、当日の様子はSNSなどを中心に大きく話題となりました。もちろんただ乗れるだけでなく、ドクターイエローの特徴でもある観測ドームに座り、高速走行時のパンタグラフや架線の様子を見ることができたり、軌道検測室や電気検測室の見学なども可能と盛りだくさんの内容となっていました。
そんな夢のような体験イベントの第2弾が近く開催される予定となっています。前回はEXサービス会員の大人1名のみが参加できたのが、今回は複数名申し込みの受付（抽選）とし、さらに中高生以下の子どもたちも参加可能ということで、一層話題になっています。
非営業車ながら、圧倒的な知名度と人気を誇るドクターイエロー。ベース車の700系はすでに東海道新幹線からは姿を消しましたが、どんな風景にも映える黄色い新幹線の末長い活躍を期待したいですね。
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