185系

特集・コラム

【6種のシートで最もおすすめは?】東武スペーシアXの気になる乗り心地

2023.06.11

text & photo:RM
取材日:‘23.6.6 場所:浅草-東武日光
取材協力:東武鉄道

スペーシアXの画像はこちら

 2023年7月15日にデビューする、東武鉄道の新しい特急列車「スペーシアX」。1990年より33年ものあいだ、フラッグシップの役を担ってきた100系に代わり、新型車両のN100系が導入され、東武スカイツリーライン・日光線・鬼怒川線を走ることとなります。

 6月に入り乗務員訓練などを目的としたテスト走行も増え、日増しに期待が高まっていますが、先日事前試乗会が開催され、ひと足早く乗車することができましたので、その様子をご紹介します。

 間もなく梅雨入りという6月6日、メディア各社が集められたのは、ブルーシートで覆われた浅草駅の5番ホーム。取材時は工事の真っ最中でしたが、5番線はスペーシアXの専用ホームとなるそうで、日光の自然や荘厳さを感じさせる木目調の装飾と光の演出を多用したデザインに生まれ変わるとのこと。また、東武日光駅も真鍮風の装飾や木目調の装飾をあしらわれるそうで、乗車の前後にも旅への期待感や余韻を楽しんでほしいという開発陣のメッセージが込められています。

【プレスリリースより】

 ほどなくしてN100系が入線してきましたが、まず感じたのは車体の美しさ。日光東照宮の陽明門などに塗られた「胡粉」を彷彿とさせる白色は、光の当たり方で表情が変化し、天候によってもその印象は違ったものになるでしょう。

 まず案内されたのは、3,4号車と5号車の一部に設定されたスタンダードシート。2+2列で配置されたシートは、オフホワイトにオレンジが組み合わせられています。背面テーブルやコンセント、ひじ掛け部のミニテーブルが各シートに備わっており、標準の座席ながら、十分な設備が揃っています。

 続いて2号車の「プレミアムシート」を見てみましょう。こちらは1+2列配置で、シートピッチがスタンダードよりも100mm広げられていることからも、かなりゆったりとした印象です。ハイグレードシートではもはや標準とも言えるバックシェルも備えており、深くリクライニングするのに気兼ねはいりません。ちなみにリクライニングは手元のボタン操作による電動です。

 話は前後しますが、スペーシアXには6種類のシートが用意されています。後述する4種にも言えることですが、今回すべてのシートを見て感じたのが、「人数」と「過ごし方」がシート選択の重要な要素になるということ。「そんなことは当然じゃないか」と思われるかもしれませんが、これだけ明確にイメージを分け、6種類ものシートを用意している列車はそうそうないでしょう。そういった意味でも、誰とどうやって時間を過ごすかによって、自ずと選ぶべきシートは絞られてくるというわけです。

 それでは続いて、5号車に設けられた「ボックスシート」を見ていきましょう。パーテーションで囲われたシートが向かい合わせに設置された半個室ですが、2名分の広さがありながら1シート1人での利用が想定されており、カップルやご夫婦でゆったりとした時間を過ごすのに適していそうです。また、東武鉄道によると車窓を楽しみながらのテレワークにもおすすめとのこと。

 ボックスシートよりもプライベート感を重視するなら「コンパートメント」がいいでしょう。スペーシアではこれまでも個室が設けられてきましたが、ソファをコの字型に設置したり、折り畳みテーブルを備えるなど、より幅広い使い方に対応してくれます。また、この個室は6号車にあるため、N100系の特徴のひとつである「六角形の窓」から見える車窓が、非日常感を演出してくれます。

 特急列車の楽しみのひとつに「前面展望」を挙げる方もいるでしょう。それは1号車と6号車の特別なシートがかなえてくれます。

 6号車の最前部は定員7名の「コックピットスイート」になっており、前面展望をグループで独り占めできる仕立てになっています。室内には大小合わせて5つのソファが置かれ、応接室のような雰囲気です。家族や気の置けない仲間との旅行で使用するもよし、2時間ほどの工程であることを考えると、誕生日などのお祝いをするというのも、一生の思い出に残る使い方ではないでしょうか。

 そして最後は東武日光・鬼怒川温泉寄りの先頭車である1号車に設けられた「コックピットラウンジ」です。日光金谷ホテルや大使館別荘などをモチーフにしたという車内は華やかかつレトロで、これまでのどの車両とも異なる雰囲気を持っています。1・2・4人掛けのソファが設けられていて、“六角形の車窓”と前面展望を楽しむことができます。

 また、1号車には「GOEN CAFÉ SPACIA X」と名付けられたカフェカウンターがあり、栃木の食材を知り尽くしたマイスターたちと共同で開発された生ビールやコーヒー、アペタイザーやスイーツ、スナックなどが提供されます。なお、これらカフェメニューはコックピットラウンジ利用者に優先して販売されるもので、2-6号車の利用者はあらかじめオンラインで整理券を取得することで購入することができるので、ご希望の場合はお忘れなく。

 今回は試乗会ということもあり、慌ただしく撮影をしながらの旅でしたが、それでも東武鉄道がこのスペーシアXに込めたおもてなしの心は、各所で存分に感じることができました。3年ほどのコロナ禍で忘れかけていた旅の楽しみを思い出すのに、これほど適した車両はないのではないでしょうか。

※撮影用に組み合わせたもので、車内で提供される形態とは異なります。

 特急券の発売は6月15日9時より始まります。今回ご紹介した各種シートの料金は、運賃+スタンダードおよびプレミアムシート特急料金を基本に、「コックピットスイート」「コンパートメント」「ボックスシート」「コックピットラウンジ」を利用する場合はそれぞれの特別座席料金が追加される仕組みです。

 では、今回の試乗会で最も印象的なシートをひとつ挙げるとすれば、「コックピットラウンジ」ということになると思います。先に書いたように、カフェカウンターも含めた特別な空間として設定されているとともに、思いのほかリーズナブルに感じられる価格設定も魅力のひとつ。

 ラウンジを利用するための特別座席料金は1人用が200円、2人用が400円、4人用が800円という設定です。それらを運賃とスタンダードシート特急料金に追加する形になりますが、内容を考えるとコストパフォーマンスは抜群ではないでしょうか。

 個人的には久々の訪問となった日光市街も、特産物を活かした飲食店やスイーツ店が増えており、改めて訪問したくなる魅力に溢れていました。ひと時の“非日常”を堪能し、ゆたかな休日を過ごしたいと感じた時、スペーシアXはきっとその願いをかなえてくれるはずです。

東武特急スペーシアXの特設ページはこちら

■関連記事

「スペーシアX」新愛称発表記念! 東武の日光・鬼怒川特急の歴史を振り返る

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加