text:鉄道ホビダス編集部
‘23.3.21 東海道本線 蒲原-新蒲原駅間 P:中井 琢也
(鉄道投稿情報局より)
我々が日頃使っている工業製品。多くの場合は工場から卸売に出荷され、そこから小売業の店が買ってゆき消費者の元へ届く、というのが大まかな流れでしょう。当然鉄道車両にも製造するメーカーがあるわけですが、そこから各鉄道会社へ「発送」されているのをご存知でしょうか。ここでは鉄道業界やレイル・ファンの間では「甲種輸送」と呼ばれる輸送風景を写真とともに詳しく見ていきます。
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■全国に点在する車両メーカー
日本国内には様々な車両メーカーが存在しています。大きなところだと日立製作所、川崎車両、日本車両製造(日車)、総合車両製作所(J-TREC)、近畿車輛(近車)などが挙げられます。いずれのメーカーも山口県(日立)、兵庫県(川崎)、愛知県(日車)、神奈川県(J-TREC)、新潟県(J-TREC)、大阪府(近車)と、様々な地方に点在しています。
各メーカーは車両を製造したら各鉄道会社に発送します。そして作った鉄道車両は様々な方法で輸送されますが、鉄道線上を車輪を使って運ぶとき、メーカーと発注元の鉄道会社線の間には、JR線をはじめとした他社線が挟まっていることが大半です。こうした場合に、「他社線を貨物列車として、貨物鉄道事業者により車両を輸送する」形態を「甲種輸送」と言います。この場合輸送される車両が新製車であってもそうでなくても、鉄道車両を貨物列車として輸送する場合は全て甲種輸送と呼びます。
また、製造した車両の軌間(レールの幅)は、必ずしもJRと同じ狭軌(1067mm)であるとも限らず、標準軌(1435mm)の会社の車両を作ることもあります。そうした場合は仮の台車に載せ替えて、各会社の近くまで輸送されます。さらにどんな私鉄線もJR線とレールが繋がっている、というわけでもありません。そうした場合は会社の車両基地の近くの貨物ターミナルなどまで一旦運ばれ、その後は陸路を使って基地へと輸送されます。
■じゃあこれも甲種輸送…じゃない?
’21.3.30 上越線 後閑〜沼田 P:筑井涼太
(鉄道投稿情報局より)
さて、メーカーと発注元の鉄道会社線の間に別な会社が挟まっている場合を紹介しましたが、そうではなく、メーカーと発注元の会社線が直接繋がっている場合はどうなるでしょうか?その一例となるのが総合車両製作所の新津事業所です。
ここの工場は元々がJR東日本の新津車両製作所であったことから、当然JR東日本の路線と直接繋がっています。そのため、新製された車両を自社の社用品という扱いで運ぶことができ、ここで作られた新製車両は自社の所有する機関車によって、そのまま車両基地まで運ばれます。この列車のことを「配給列車」と言い、貨物列車の一部となる甲種輸送とは明確に区別されます。イメージとしては甲種輸送における車両は荷主のいる「貨物」ですが、配給列車における車両は自社の「社用品」という扱いで運ばれます。
また、近畿車輛もJR西日本の路線と繋がっていることから、ここで作られたJR西日本の車両については甲種輸送は行なわれず、そのまま自力走行で試運転も兼ねて出場する場合が大半です。
普段意識することは少ないですが、鉄道車両も立派な工業製品。こうした物流としての側面を持った列車もまた面白いですね。
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