185系

特集・コラム

「E」のつかない特急型は2系式に JR東日本初期に登場した車両の現在と今後は?

2023.04.12

text:鉄道ホビダス編集部

‘19.11.23 幕張車両センター P:田部井毅大
(鉄道投稿情報局より)

 1988年に落成した651系を皮切りに続々と登場していったJR東日本の特急型車両たち。いずれも国鉄時代のそれとは一線を画す、これからの時代を担うフラッグシップ車の風格十分な魅力的な車両ばかりでした。

 ですが、それらJR化直後に登場した車両たちの車齢も30年を超え始め、平成の終わり頃から次々に引退が始まりました。2023年4月現在、651系が3月に定期運用を終えたことで、気が付けば系式に「E」がつかない特急型車両は253系1000番代と255系の2系式のみとなってしまいました。今回はそんな2系式にクローズアップしていきます。

↓懐かしの253系と現在の255系の写真はこちら!↓

■今なお現役の253系 実はE257系より新しいってホント?

’02.5.16 鎌倉総合車両所 P:RM

 特急「成田エクスプレス」用に、1990年に落成した253系。3両編成と6両編成が存在し、自在な編成を組むことができるのが特徴の一つでもありました。また、塗装も白と赤とグレーと黒と、シックながらも目立つカラーリングは、国鉄型ではなかった存在感を放ちました。

 そんな空港連絡特急として生まれた253系ですが、2010年に後継車であるE259系に置き換えられる形で全車が「成田エクスプレス」から撤退。ほとんどの車両がそこで廃車となりました。そんな中で、運用を続けた編成が僅かに存在しました。それが長野電鉄に譲渡された3両×2本と、今回紹介する東武直通特急用として改造を受けることとなった6両×2本です。
 2010年当時、東武線直通特急「日光」「きぬがわ」で運行されていた485系・189系は老朽化が進んでいました。そのため、成田エクスプレス撤退で余剰となった253系に白羽の矢が立ち、改造されこれら国鉄型を置き換えることとなりました。そうして誕生したのがこの「1000番代」です。
 253系の1000番代の種車となったのは、200番代と区分される車両で、2002年のサッカーワールドカップ開催に伴う輸送力増強のための増備車でした。そのため落成は2002年4月で、なんと初期に落成したE257系よりも新しいことになります。「成田エクスプレス」撤退時でも車齢は8年ほどであったという事情からも、こうした転用に抜擢されたのが窺えます。ちなみに、200番代の主電動機や主制御装置といった床下機器は、205系の武蔵野線転用時、VVVFインバーター化によって発生したものを再利用しており、0番代同様の界磁添加励磁制御となっていました。

 1000番代にするにあたり、VVVF化を中心に床下機器の更新を行なったほか、赤基調の塗装に改めた上、非貫通化や前面に愛称表示LEDを設置するなど、見た目にも大きな変化がありました。
 2023年3月のダイヤ改正により「日光」の運用が廃止されてしまい、現在では「きぬがわ」で運行を続けています。253系1000番代は落成からは20年が経過、改造からも12年以上が経過しており、近年縮小傾向にある東武〜JR直通特急の今後は注目していきたいところです。

■いよいよ30年選手へ…255系

 253系登場後、房総方面へ向かう特急のイメージアップを目的に、1993年7月に「房総ビュー」という愛称を付けられデビューした255系。京葉線東京駅から発着し、内房線方面へ向かう「ビューさざなみ」と、外房線方面へ向かう「ビューわかしお」でデビュー。その後、総武本線東京駅から発着の「しおさい」や「あやめ」にも投入され、房総地区ではお馴染みの特急型車両となっていきました。

▲千葉県らしい菜の花畑をゆく255系。黄色い車体のアクセントと色がマッチしている。こうした四季折々の風景と一緒に255系を見られるのはあと何回くらいあるのだろうか。

‘18.4.14 総武本線 飯岡―倉橋 P:大胡 忠
(今日の一枚より)

 車体に関しては253系に類似した断面を持ちながらも、塗装や前面廻りのデザインは大きく異なります。さらに特筆すべき点としては、253系時点では見送られたVVVFインバーター制御を、この255系では本格採用しました。JR東日本の特急型でのVVVFインバーター採用はこれが初の事例で、背景にはVVVFインバーターを採用した試作車901系、そして255系のデビューと同年の1993年に量産が開始された209系があります。制御装置自体は901系B編成(後の209系910番代)に採用されていた、東芝製GTO素子VVVFインバーターをベースにしていました。209系と同様に、255系も今に続くVVVFインバーターの時代の先駆けとなった車両の一つであったのです。

 2010年頃より、スカートを強化型に交換され、2014年頃からはGTO素子のVVVFインバーターからIGBT素子のものに更新されました。こういった小変化はあるものの、外観や編成に関しては、大きな変化は今に至るまでありません。
 このように、255系は塗装や車体に関してはほぼオリジナルの形態を保っている上に、走行線区も大きい変化はなく、都心部と房総方面を結ぶという登場時からの使命を今もなお担い続けています。

 1993年から今年で30年。255系が走る線区を行く他の車両たちは、大きく様変わりしました。特に京葉線や房総各線で活躍していた国鉄型たちは一掃され、それらを置き換えた209系やE217系でさえも後継車が登場するようになってきました。
 「成田エクスプレス」専任であったE259系のリニューアルなども控える中、初代「成田エクスプレス」の253系や、登場時から変わらぬ活躍を見せる255系といった「E」が付く以前の車両たちのこれからは、今後ますます目が離せなくなっていくことでしょう。

↓懐かしの253系と現在の255系の写真はこちら!↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加